Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第38章 ☆世界一、君が好き。《及川 徹》
徹に告白されたのは、高校の卒業式。別々の大学に行ったけれど、付き合いは継続。徹が実業団チームに、私が一般企業に入社したのをきっかけに、同棲を始めた。
イタリア遠征の話を聞いたのは、同棲がちょうど1年経った12月のことだった。
『徹にぜんっぜん会えなくなっちゃう!』
「んー、まぁそうだね。でも、一生の別れってワケじゃないし。ね?」
脚を組んでソファに腰掛ける徹。その隣に座り、こてんと頭をその肩にもたれる。
徹はバレーも上手でカッコいいから、どこに行ってもいろんな人の目がある。20歳を越えてからは、大人っぽい色気まで出てきちゃって、ますますイケメンに。
だから、心配なのに。
「有志を募ってイタリアに行くんだ。10人くらいで、半年を2回で1年間」
『その話、断る気っていうのは…』
「ない、ね」
恐々訊いてみると、徹は首を横に振った。
「も~、そんな顔しないで!俺は海宙の笑ってる顔が好きだよ」
『うぅ~っ』
優しい徹の声音と笑顔に、思わず抱き付いた。
"龍神NIPPON "。かつてそう呼ばれ、3大会連続でメダルをとった日本の男子バレー。でもそれは過去の栄光になりつつあった。そんな中で代表に選ばれた徹。そして世界の頂点を目指したいと、そう言うのだ。
私に、止められるわけなんて、ない。
「海宙が心配してくれてるのは分かるよ。事実、ヨーロッパは情勢も不安定だしね」
『だったら…』
「でも決めたことなんだ。いつか後悔しないためにも、今できることをやりたいんだ」
『それが、バレー?』
「うん。だから今だけは、俺に好きなことをやらせてくれないかな?」
トントンと背中を叩きながら、徹は言った。私がそのお願いを断れないって知っててそんなこと言うなんて。
『…っ、徹は、ずるいよ…』
「海宙のこと寂しくさせるかもしれない。それでも、行かせてくれる?」
『…徹だから、許してあげる』
ありがとう、と言いながら、徹はキスをしてくれた。それだけじゃ物足りなくて、おねだりした。その夜、私は徹にたくさん愛された。繋がって、このまま溶けて一緒になればいいのに。情事の最中、ぼんやりと思った。
そしてお正月の直後。新年を祝う間もなく、徹は異国の地へと旅立っていった。
―――そして、今に至る。