Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第37章 なでたいお年頃《影山飛雄》
ひとしきり泣いて、ようやく涙も止まってきた。影山が差し出してくれたハンカチで目元を拭った。赤くなるかなぁ、仕方ないや。
「蒼井、大丈夫か?」
『うん。取り乱してごめんね。あと、助けてくれて本当にありがとう』
良かった、今度はちゃんと言えた。のほんとした空気が流れる中、落ち着いた私はふと思った。私、大分恥ずかしいことしなかった?
影山君の前でわんわん泣いて、挙げ句の果てにはハンカチまで借りちゃって。それって女子としてどうなの、女子として!
「蒼井…?」
『………ん?』
「蒼井、なんか、スゲー顔してた」
そんなに百面相だったのか。えへへと笑いながらハンカチを返すと、影山君が手を伸ばし、頭を撫でる。いつもと同じその感触に、止まった涙が溢れそうになる。
「助けんの、遅くて悪かったな」
『ううん、影山君のせいじゃないよ。あいつはね、悪いヤツじゃないんだ。でもなんか、怖くって。影山君じゃないから、なんか気持ち悪くて。それで気付いたの。頭、撫でられるのは影山君だけが良いなぁって』
「それって…っ!」
驚いた表情の影山君に、しまったと思う。思ったままに伝えてみれば、うっかりとんでもないことを言ってしまった。でも取り消しボタンなんてないから、勢いに任せる。
『私、影山君のこと、好き。猫の代わりとかじゃなくって、彼女に、なりたい、です…』
尻すぼみになる声。それに伴ってだんだん視線も下を向く。だって、見れない、顔なんて!影山君の反応がなくて、だんだん心配になる。するとまた、頭に重み。
「あークソ、俺も好きだボゲーッ!」
本日3回目の、そして今日一番に大きな声の"ボゲ"。それと同時に、腕の中に閉じ込められた。今までの分をまとめたかのような、ぎゅうぅっと力強いハグ。
「蒼井、今日から俺の彼女だ」
『う、うんっ!』
「だから、もう二度と俺以外のヤツに触られんなよ。いや、誰とも話すな!」
『えぇっ!?それは過保護だよぉっ!』
影山君の私を大切にしたいという想い。その腕の力強さが切実に物語っているようで。影山君になら少しくらい縛られても良いかな?なんて、思ってしまう私なのだった。
END.