Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第37章 なでたいお年頃《影山飛雄》
掴んだ手を、ぐいと捻り上げる影山君。
『かっ、影山君っ!?』
助けに来てくれた喜び半分、どうしてここにいるの?っていう驚き半分。目の前で起こる出来事に、ただただ、呆然とするばかり。
「いっ、いでででででででっ!」
「気安く触ってンじゃねェ、ボゲッ!」
ぶんっ、とクラスメイトの腕を振り払う。するも、その男子は赤くなった腕をさすりながら口を尖らせてこう言った。
「なんだよ、影山のモンじゃねぇだろーが」
「あ"!?」
「付き合ってないんだろ、お前ら」
勝ち誇ったように言うクラスメイト。しばらく無言でいた影山君に、ニヤリと笑う。
「ほらな、やっぱりそうで…」
「バカ。これからなるんだよ」
そう言うと、影山君は私をぎゅうと抱きしめた。何が起こってるのか分からず、軽くパニックになる。だって、ここ、教室…っ!
金魚みたいに口をパクパクさせるクラスメイトに、今度は影山君がニヤリと笑った。
「これでいいか?」
「…ちっ」
低く舌打ちすると、その男子は教室を出ていった。影山君は私の手を取り、イスから立ち上がらせると、そのまま歩き出した。キャアッという女子の黄色い声が聞こえた。
『えっ、ちょ、影山君っ!?』
「るせ、行くぞ!」
影山君に引かれるまま、私は教室を飛び出していた。影山君の歩くのが速くて、小走りになってる私。後ろからじゃ顔は見えないけど、繋いだ手から伝わる温度に、なんだかドキドキしてしまった。
そして辿り着いたのは校舎裏。影山君は不意に立ち止まり、くるりと私を振り向いた。
「簡単にさわらせてんな、ボゲ!」
『ごめん…でも、助けてくれてありが…』
ありがとう。そう言ったはずなのに、言葉は出てこなかった。代わりに出てきたのは、大粒の涙だった。緊張がほどけたのか、止めようとしても止まることなく溢れてくる。
「っおい、大丈夫か!?」
『ごめ、安心しちゃって…っうく…』
どうにか嗚咽を止めようと唇を噛んで堪えていると、頭にポン、と重みが載った。それはいつもと何も変わらない、影山君の手で。また安心して、涙は止まるどころかますます溢れてきた。小さく泣く私を、影山君はいつまでも、優しく撫でてくれていた。