Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第37章 なでたいお年頃《影山飛雄》
時間が過ぎるのは本当に早い。夕方を過ぎるまで部活をする日が何日も続き、気が付けば季節が1つ、変わっていた。
その間、私はモヤモヤした気持ちを抱えたまま、日々を送った。影山君を"好き"ということに気付いたら、そこからはもう、なんというか…心の中は常にカオスだった。
コクっちゃえ、と思う反面、部活もあるし第一向こうに気はないから、と諦める。なんて面倒くさい、恋心。世の中の女子たちはこんなことでキャアキャア言っていたのか…うーむ、なんというか、タフだなぁ…
「…でねぇ、彼がねほんっとイケメンで」
『はいはい、そうですか』
紙パックの"ぐんぐんグルト"をジューっと吸う。残り、少ないなぁ。友達の恋バナ(のろけ)を聞く、なんてことない昼休み。
半分聞き流し、半分影山君のことを考えていると、そこに一人の男子が混ざってきた。
「前から思ってたんだけどさ、蒼井って、バレー部の影山と付き合ってんの?」
『っぶふぉ!』
飲んでいたヨーグルト飲料を、思いっきし吹き出す。我ながら、ヒドイ反応だね。
「うっわ、きったね!」
『あんたがっ、ヘンなこと言うから!』
「ったく、なんなんだよ~」
そう言うのはバスケ部の男子。そこそこ仲も良いし、割りと良く話す。さて、そんな彼が言うには、こういうことらしい。
「だってよ、いつも撫でられてるべ」
『あぁ、あれはね…』
誤解を招かないよう、そうなった事情をかくかく然々と話す。すると、彼は程なくして納得したようだった。
「へぇ、そっか~…でもそんな気持ちぃモンなのか?俺にもちょい撫でさしてみ」
そう言って彼は手を伸ばす。頭に手が触れた瞬間、ゾクッと悪寒がした。影山君じゃ、ない。触れ方が、撫で方が、気持ち悪い。
やだ。いやだいやだ、お願い、影山君…っ!
怖くて怖くて、ぎゅっ、と目を瞑る。すると、撫でていた手の気配がフッと消えた。
「蒼井ッ!!」
すっかり耳に馴染んだ声に、恐る恐る目を開く。そこには、クラスメイトの手を掴み、鬼神の如く怒りに燃える、影山君の姿があった。