Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第37章 なでたいお年頃《影山飛雄》
未来と花音にからかわれた放課後。いつもと変わらずに、部活の時間はやって来る。
「蒼井、いいか?」
『あ、うん』
影山君に呼ばれれば、そこまで走る。それからしばしの間ナデナデ。ちらりと上目に窺うと、本当に気持ち良さそうに目を閉じている。口角は少し上がっているし、薄く開いた口からは弛い呼吸が聞こえ…って。
何を考えてるんだ、私はっ!
それでも、影山君から目を離せなくて、じぃと見詰める。と、影山君の手が頭から離れた。
「サンキュ。助かった」
『うん』
そう言うと、仁花ちゃんからビブスを受け取りゲームを始めた。ボールを追い掛け、精密なトスを上げるその姿を、私はぼんやりと見詰めるのだった。
そんな日々が1週間程続いた。幸い、鈍感な影山君は私の変化に気付いていないみたい。でも、いつかバレちゃうんだろう。
未来と花音にからかわれたあの日以来、私は影山君のことが、気になって仕方ないのだ。
同じクラスの子も、影山君はカッコいいと良く言ってるけど、私にも、最近になってようやく分かってきた。
影山君は、格好いいのだ。
見た目はトップクラスのイケメン。たまに出てくる天然…というかおバカなところもギャップ萌える。そして極めつけは、バレーにかける思い。"バレーが恋人"なんじゃないかってくらい、バレーが好きだ。
全身で懸命にボールを追い、両手で精密なトスを上げ、頭の中では戦略を次々に練る。その一挙一動に、なぜか、胸が高鳴るのだ。
『なんでだあぁぁぁ…』
「蒼井…?」
『っわぁ、ごめんなさい!』
びっくりした。まさか影山君に聞かれるなんて。次から考え事をする時は周りに注意、と。
撫でてもらうのは嬉しいけど、撫でてる理由が猫の代わりっていうのが、なんか複雑な気持ちだなぁ…そこまで考えたところで、ある結論に辿り着く。
『私、影山君のこと、好き…っ?』
一度でも言葉にしてしまったら、急に実感が沸いてきて、ぶわぁっと顔に熱が集まる。私が影山君を好きなのはいいけど、でも影山君はそんなこと思ってないだろうし…
『恋って、疲れるなぁ…』
「疲れたのか?」
『っな、なんでもないれひゅっ!』
またしても、影山君。危ない危ない、もっと周りに気を付けなくちゃ。コートに戻る背中を見詰め、はぁっとため息を吐いた。