Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第37章 なでたいお年頃《影山飛雄》
それからというもの、影山君は事ある事に私の頭を撫でてきた。部活中はもちろん、練習試合でも休憩なんかで撫でてくる。
「烏野9番、何やってンだ?」
「新手の儀式…とか?」
練習試合ともなると、そんなこそこそ話も聞こえてくるわけで。相手校の選手の視線を感じる度に恥ずかしいのは、仕方ない。
「蒼井」
『あ、やるの?』
「あぁ、頼む」
影山君が呼ぶときは、決まって撫でる時。前にちょこんと立つと、影山君が手を伸ばす。ナデナデ…最近気付いたことだけど、私は撫でられるのが好きらしい。影山君に撫でられてると、私も気持ちよくなる。
初めこそ照れるし恥ずかしかったし緊張した。でも、1ヶ月も経たないうちに慣れてきた。ふと、いつまでこんな日々が続くのかなぁと思った。どっちにせよ、高校にいる間は続くかなぁ、と内心苦笑した。
とあるお昼休み。友達と3人で廊下をあるいていると、影山君に遭遇。お昼何食べたのかとか、5限の授業が眠たいだとか、そんな話を少しだけした。
『じゃあ、また部活でね!』
「おう、またな、蒼井」
すると、影山君はいつもみたいに頭をポンと撫でて歩いて行った。その後ろ姿が角を曲がって見えなくなった頃、友達の未来(みらい)がニヤニヤと笑いを浮かべているのに気付いた。
「ちょっと海宙、まさかとは思うけど、あんた影山と付き合っ てるの!?」
『つっ付き合ってなんかない!』
全力で否定すると、未来だけでなく、花音(かのん)まで言ってくる。
「いやいや海宙、それはムリがあるよ。影山が頭を撫でてる時、まるで愛しいみたいに撫でてたからね、うん!」
『ちっ、違うもん!』
「えぇ、本当かなぁ?」
「そうは見えないよぉ?」
『ちーがーうってばぁ!』
真っ赤になりながら理由と経緯とを説明すると、やっぱり未来はニヤリとしている。
「ふぅん。ま、どんな理由にせよ、私はあんたの恋を応援するからね~」
「よっ、青春!」
『だから違うってば!』
けらけらと笑っていると、予鈴が鳴る。3人ともクラスが違うから慌てて戻る。でも、未来と花音の言葉が頭から離れない。
付き合ってる?
まさかそんなわけ。
でも好きだったら?
いやまさか。
私の思考は迷路に填まったようで、5限の内容は1㎜も頭に入らなかった。