Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第37章 なでたいお年頃《影山飛雄》
一息に言い、荒い息をする影山君に、私を含む周りのみんなはポカンとしている。と、日向君がニヤニヤしながら影山君をつっついた。
「あれ?影山君は変態ですか?」
「ハァ?ふざけんなよお前」
影山君はガッと日向君の頭を掴んだかと思うと、そのまま上にグイと持ち上げる。じたばたもがく日向君を菅原さんが救出。それから菅原さんは言った。
「えぇと影山、蒼井さんの頭を撫で…撫で回したい?理由があるのか?」
その言葉にこくりと頷き、影山君はその理由を話し出した。
「俺、動物に怖がられるんス。でも、一匹だけ触っても逃げない猫がいて。その猫撫でたらスゲー落ち着いて。感触が蒼井さんの髪に似てて…」
「え、影山触ったの!?」
ギョッとする日向君に、影山君はあからさまにイラッとしながら言った。
「髪に付いてた葉を取ったんだよ!で、その猫触った後、バレーに集中できたから、蒼井の頭撫でたら同じ効果出るかと…」
「女子だから遠慮してた、ってことだな」
菅原さんが代弁すると、影山君は頷いた。なるほど、ガン飛ばしてきたのはそれが気になってたからなのか。
『なんだ、そうだったんだ…いいよ、私の頭でいいなら好きなだけ撫でても』
私がそう言うと、一斉に視線が集まる。
「「「「いいのかっ!?」」」」
『じっと見られるよりはいいからっ!』
叫ぶように言うと、それもそうかとみんなは納得。その様子に、影山君は不満そうに唇を尖らせた。
『はい、どうぞ』
影山君の前にちょこんと立つと、じゃあ…と言いながら、影山君は私の頭にそろりと触れた。最初は戸惑いがちだったけど、気持ち良さそうに眼を瞑っている。
みんなの注目が集まってるから、なんか悪いことしてるみたいでムダに緊張するけど。しばらく撫でた後、ふーっとため息を吐いた影山君。その顔は、お風呂上がりみたいにスッキリとしている。
「ありがとう、落ち着いた」
『良かった。あ、じゃあさ、これからも撫でたい時はいつでも撫でて良いよ』
冗談半分に言ってみたら、ガシッと両肩を捕まれる。そして前後にガクガク揺すられる。
「マジか!?また撫でていいのかッ!?」
『い、良いよ…だから離して…』
「おう。じゃあ、よろしくな」
『うん、分かった』
こうして、私と影山君の間に謎の提携が生まれたのです。