Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第29章 ずっと、君だけを。《烏養 繋心》
【烏養 side】
のれんを潜るとそこは行き慣れた居酒屋。最早定番になった奥の座敷席に見慣れた2人の姿がある。
『おっまちー、キャー誠だ、祐輔だ!』
「おっす、遅くなったな」
キャーキャーはしゃぎながら2人に駆け寄る海宙。海宙は大学が東京だったから、会うのは8年ぶりだ。そりゃあはしゃぎたくなるのも分かる。けどな、
「少しは静かにしろよ」
『はぁい。ほら、繋心も座って!』
ちゃっかり座ってビールを飲んでいる海宙に苦笑しつつ、その隣に俺も座る。それからおばちゃんに生ビールと玉こんにゃくを頼んだ。
「しっかし蒼井は美人になったなぁ」
『そんなこと言ってもなんも出ないよ?』
「いや、綺麗になった。な、烏養?」
滝ノ上がニヤニヤしながら言ってくる。
「あー、まぁ、美人だと思うぜ?」
ちらりと横目で窺えば、海宙は肉じゃがを頬張りながら、アリガトけーしん、ともにょもにょ呟いた。
なんだよ、なんでそんな反応すんだよ。
滝ノ上の時みたく、すればいいのに。
『ねぇ、けーしんは彼女とかいないの?』
「いねぇよ」
『つまんなーい。あ、誠とゆーすけは?』
「「募集中」」
えーつまんないと海宙は笑った。口調が伸びてるし頬も赤い、酔ってるなコイツ。
「そう言う蒼井はどうなのよ?」
『んー、どうでしょ?あはっ、誠がなる?』
わざとらしく妖艶に微笑んでみせる海宙。嶋田はぼっと赤くなった。
「マジでっ!?///」
『くふふ、うっそだよーん。騙されたー』
けたけたと笑いながら、海宙は俺に寄り掛かってきた。
『ねぇけーしん』
「ん?」
『予定変わってね、向こうに行くの早くなってさ、今月の23日なんだ』
「ほー、なら見送り行ってやるよ」
『うん、成田までついてきてね』
マジかよ、マジでーす。その会話に嶋田がどこに行くんだと言い、ロスだと答えると、滝ノ上は大袈裟に会えねー!と嘆いた。詳しくその話をしていると、ついに海宙が潰れそうになったので家まで送ることに。
『あーあ、クリスマスこっちが良かったなぁ』
助手席の海宙が夢うつつ呟いた言葉に、
その時隣にいるのは誰だ?なんて。
俺に言えるはずもなかった。