Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第29章 ずっと、君だけを。《烏養 繋心》
店に入ってきたのは、髪がオレンジの小柄な少年と、黒髪の長身の男子生徒だった。
「コーチィっ!練習始まりますよ!」
「先生が探してます」
「お、もうそんな時間か」
繋心はコートを羽織ると店仕舞いを始めた。じゃまだと外に追いやられ、あっという間にシャッターが閉まる。
「じゃ、俺らは行くな」
『えっ、ちょっちょ、待とう、ね?』
私だけ状況についていけない。
『まず、彼らは誰?』
「烏野のバレー部員だ。おい、俺の同級生でバレー部のOGだ、挨拶しろ」
「こんちわっ、おれ日向翔陽、1年ミドルブロッカーやってます!」
「ちっす、影山飛雄、1年セッターです」
『えっと、おちび君がしょーよーで、セッター君がトビオね!』
おちび!とショックを受けるしょーよー。だって、私よりも小さいし。それよりトビオはセッターなんだ。私も中学はセッターだつたし、なんか親近感沸くなぁ。
『へぇ、じゃあ繋心は烏野バレー部のコーチやってるってことなんだ』
「おう。海宙も来るか?」
『うん、今の烏野、見てみたいな』
そうして、急遽母校である烏野高校に向かうことになった。道行く景色は所々に8年前の面影を残していて、懐かしい。
烏野高校に到着し、練習を行っているという体育館に向かう。しょーよーが教えてくれたが、烏野は春高で宮城代表になったらしい。
『へーぇ、スゴいね!』
「だろ」
『なによ、万年ベンチウォーマーズ』
「うっせ、黙れ!このチービ!」
『トビオより繋心のが小さいじゃない』
ムキになる繋心。それから2人でけらけら笑うと、しょーよーとトビオは不思議そうに私たちを見た。
『なに?』
「いえっ!コーチがこんな風にするの、初めて見たんで…」
『そぅお?この人けっこう笑うよ、ね?』
「そー、か?」
『うん。あ、今日さ、誠とか祐輔誘って4人で飲みに行こーよ!』
「へいへい。部活終わったら、おすわりな」
"おすわり"懐かしいなぁ。帰り道にあった居酒屋さん。大人になったら行こうねと言っていたが、大学が東京の私はついに行くことがなかったのだ。
『部活、楽しみだなぁ。あっ、久々にトス上げたいな!繋心、良い?』
「お前がはしゃぎすぎんなよ?」
『おうよ!』
賑やかな私たち大人を、しょーよーとトビオはやっぱり不思議そうに見ていた。