Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第29章 ずっと、君だけを。《烏養 繋心》
【蒼井 side】
いつからだろうか
その姿を、無意識のうちに目で追っている。
いつからだろうか
その表情に、魅せられている。
いつからだろうか
その優しさに、胸がしまるようで。
貴方はいつも、私の心にいる。
駅から見慣れた町を歩く。東京から宮城の烏野へと帰ったのは、つい昨日のこと。今日は1日散策に使うと決めたのだ。
はぁっと息を吐けば白くほわっと広がる。手袋をしていても、12月の冷気が刺すようだ。
『もうすぐ1年、終わっちゃうなぁ…』
早く春にならないかなぁと思いながら、ほうっと長い息を吐く。相変わらず、白いもやが漂うだけだった。
長い長い坂道の下、そこに一軒の商店がある。私が高校生の頃から変わらない、瓦屋根の昔ながらの外装は、雰囲気がある。
カラカラと引き戸を開けば、店主はカウンターに脚を乗っけて新聞を読んでいる。
懐かしいその姿に、鼓動が速まる。
『けーしんっ、なーにしてんの?』
「うぉっ、海宙!?」
読んでいた新聞をバサリと取り落とし、慌てふためく様は、滑稽で笑えた。クスクスと笑いながら、カウンターの前に落ちる新聞を拾い、繋心に渡す。
「お前、東京じゃなかったのかよ!」
『久し振りに帰ってきたのよ、宮城に。せっかくだから顔出してこうと思ってね』
ぐるりと見渡す店内には生活用品やら何やらが雑多に置かれている。
『あーあー、こりゃ店主の性格が窺えるね』
「再会早々ひでーな!高校の頃より悪口に拍車がかかってんじゃねーか!」
ったく、と言いながら座り直し、タバコをふかす繋心。高校の頃となんら変わらない姿に、とくんと胸が鳴る。
「あー、んで?なんで戻ってきた?」
『私ね、来年から海外に転勤なの』
「海外ィ!?」
『そ。うちの会社、海外に支店を出すの』
私の勤めるケーキ屋は海外支店を夢見ていた。その第一歩として、ロサンゼルスに支店を置くことになったのだ。
「なんか、スゲーな。住む世界が違うわ」
『そうかな?私の目には繋心は今も昔も変わらないよ?あ、ちょっと老けたかも』
「っざけんな!」
『事実を言ったんですぅ』
「んだとこの!」
ぎゃーすか騒いでいると、烏野高校の生徒らしい少年が何人か来たので、一時休戦となった。