Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第28章 放課後でぇと《木葉 秋紀》
そして向かったクレープ屋。移動販売車なのだが、いつでも駅前にいる。そこは種類が豊富で、季節限定メニューなんかもある。今はクリやらカボチャの特別メニュー。
列の後ろに並ぶと、店員がメニューをくれた。海宙はというと、メニュー表とにらめっこをしている。
『チョコバナナおいしそー!宇治抹茶にキャラメル、んー、でもこっちのイチゴのも捨てがたいなぁ…』
「んじゃ2個食おーぜ。俺も食う」
『えっ、つい1時間前にあんなにうどん食べてたのにまだ食べれるの!?』
「男子の胃袋ナメんなよ?」
『ふふっ、じゃあちょっとずつ味見しよ?』
そう言ってさんざん悩んだ挙げ句に海宙は"Wクリームチョコバナナ"と"ベリー&ベリー"を選んだ。
順番が回ってきたところで、早速注文。レジにいたのは、ばあちゃんと同い年くらいのおばあちゃんだった。
「すいません、Wクリームチョコバナナとベリー&ベリーを1つずつ」
「はい、お買い上げ900円になります」
そう言ってレジを打つおばあちゃんに、海宙は待ったをかけた。
『えっ、あの、待ってください!これ、両方合わせたら970円じゃ…』
「あら、そうね?でも、かわいい恋人さんたちにサービスしてあげるわ」
うふふ、とおばあちゃんは俺たちに微笑み掛けた。海宙はそうなんですよ、分かります?なんて言ってるが、俺の心臓は破裂寸前。
"かわいい恋人さん"なんて言われるのは初めてだ。しかも、言うってことはそんな風に見えてたってことで、それはイコールお似合いのカップルね、ってことで…
『秋紀っ!』
「お、おう!」
『なーに百面相してんの?早く食べよ?』
「あ、ワリィ…」
いつの間に会計が終わってたのか、海宙の手には2つのクレープ。海宙はおばあちゃんに会釈した後、近くに空いていたベンチに座った。
「ちょっと!」
「はいぃっ!?」
呼ばれて振り返ると、おばあちゃん。
「彼女のこと、大事にしてあげなさいね?」
どこかばあちゃんに似た笑みを浮かべながら、おばあちゃんは言う。
「もちろん、幸せにしますよ」
「そう。素敵な彼氏で、あの子も幸せねぇ」
本当に嬉しそうに笑うばあちゃんに、俺も笑った。それから、早く食べたくて待っているだろう海宙の元へと走った。