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Volleyball Boys 《ハイキュー!!》

第27章 ☆両想いの彼らの事情《山口 忠》




【蒼井 side】


『ってなことがありまして…』

帰り道、とぼとぼ歩く私は、昨日の出来事を仁花ちゃんに話していた。

「っひゃ~!む、村人Bの私には…無理…」

動揺する仁花ちゃんは、うぷ…と口を手で押さえている。その背中をさすってあげながら、はぁっとため息を吐く。

「…やっぱり忠君が避けてるのは、昨日のキスした後のヨダレまみれの顔が汚いって幻滅しちゃったからかな…」

そう言うと、本当にそうなっちゃったみたいで、じわりと視界が滲んだ。

「そっ、そんなことないよ!山口くんにはもっと、ちゃんとした理由があるはず!例えばカゼを移しちゃうからとか、なんか、理由が…あるんじゃ…」

励ます仁花ちゃんの語気は、だんだんと弱まっていく。そして、さっきまで堪えていた雫が、ぽろりと零れる。

「嫌だよ…私…忠君と一緒にいたい…」

溢れる涙を拭きながら、合宿での告白を思い出した。考えてみれば、勘違いで始まった恋だった。

あれからたっくさんデートしたり、お昼は中庭で一緒に食べたり。楽しかった想い出が次々に頭の中を巡る。

嗚咽を漏らして泣く私に、仁花ちゃんは優しく頭を撫でてくれた。その温かさに、もっと涙が込み上げてくる。


私たち、もう、ダメなの…?

もう、おしまいになっちゃう…?

そんなの、嫌だよ。

忠君、忠君。

私は、貴方が好きなのに。

こんなにも、貴方が大好きなのに。


『ただし、くん…』

小さくそう呟いた刹那。後ろから叫び声が聞こえてきた。

「海宙―――っ!!」

ハッとなって後ろを向くと、汗だくになって山口くんが走ってきた。私の前で急ブレーキをかけ、それから私を抱きしめた。

「…海宙ごめん。本当にごめん。不安な気持ちにさせちゃって…」

『ただし、くっ…ふぇえ…っく…』

忠くんだ。この温かさと、匂いと、抱きしめてくれる腕は、忠君だ。

人の涙腺とはこうも弛かったのか。安心した途端、安堵の涙がぽろぽろ零れる。私は忠君にしがみついてわんわん泣いた。すると、仁花ちゃんが、あっ!と声を上げた。

「むっ、村人Bは退散いたしますです!」

ピシッと敬礼をしてパタパタと駆けていく仁花ちゃん。一度だけ振り向いて、にこっと笑った。大丈夫だよ、って言ってくれた気がして、少し、気持ちが軽くなった。


   
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