Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第27章 ☆両想いの彼らの事情《山口 忠》
縁下さんは、こほんと咳払いをすると、俺に質問をした。
「…なぁ、山口。大人のキスした時蒼井さんヨダレ垂れてなかったか?」
「「はぁっ!?」」
「力っ、何訊いてんだよ!?」
「そうだそうだ!」
「バカ2人は黙ってろ!」
縁下さんにいきなり言われ、俺はしどろもどろになる。縁下さん本人は至って真面目な顔で、どうなんだっと訊いてくる。俺はこくこくと頷いて、垂れてましたと正直に言った。
「それを見て、山口は汚いって思った?」
俺は俯いていた顔をばっと上げた。
「そんな分けないじゃないですか!むしろすごく、い、色っぽくて、きれいで…」
「そうだよな、お前はそうだよな。けど蒼井さんは、どう思ってる?」
蒼井さんは、どう思ってる?
その一言にハッとする。
「もしかして、山口が避けるのは昨日の私の顔が気持ち悪くて、汚かったから避けられてるって思ってるんじゃないのか?」
ぐっさりと胸を刃物で抉られたようだった。
俺は、バカだ。自分のことばっかりで蒼井さんのこと、なんにも考えてあげてなかった。今も不安で、押し潰されそうになってるはずなのに。
「男なら自分の変態を嫌われるよりも、彼女の不安を取り除く方を優先しろ!」
縁下さんはそう言いながら、俺の背中をパシッと叩いた。今ならまだ蒼井さんに追い付くから。縁下さんにそう言われ、俺は覚悟を決めた。
「ごめんツッキー!先に行くねっ!」
ツッキーに言うだけ言って、カバンを抱えて部室を飛び出した。ツッキーの横顔が、頑張れって言ってるみたいだって言ったら、ツッキーは怒るかな?
通学路を全力で走る。今までで、たぶん一番速い。早く、早く蒼井さんに会いたくて。胸の内の不安を取り除いてあげたくて。
俺のことをいくら嫌いになっても構わない。
別れようって言われても構わない。
今はただ、君を安心させてあげたいんだ。