Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第27章 ☆両想いの彼らの事情《山口 忠》
部活後のミーティング、烏養コーチが開いていたファイルを閉じた。
「じゃ、今日はここまでだ」
「ありがとうございましたっ!」
「「「あーっしたぁ!!!」」」
部活が終わり、片付けを始める。田中先輩と西谷先輩がふざけてて、それを大地先輩が叱っている。仁花ちゃんと苦笑いしながらボールを片付けていると、日向君に呼び止められた。
「あのさ、この後おれと影山残るからさ、ネット出したままにしていい?」
『うん、分かった。じゃあ倉庫のカギお願いしていい?』
おう!と笑う日向君にカギを渡す。それから体育館を見回して、見付けた。体育館を出ようとする背中を追い掛け、呼ぶ。
『山口君っ!』
「蒼井さん…」
振り返った彼は、私と目を合わせてくれない。それでも、言いたいことがある。
『少し、話をしたいんだけど…』
「ごっ、ごめん、また後で!」
行こうツッキー、と隣の月島君に言い、立ち去ろうとする山口君。とても焦っているその姿に、ムカッ、カチン。
そんなに話したくないなら、それなりの理由があるんでしょうね。
そう思った私は、山口君を追い掛けて腕をむんずと掴まえた。
『ねぇ、山口君っ、どうして今日は私の話を聞いてくれないの!?』
「あーもう、うるさいっ!」
『きゃっ!』
バシッと腕を振りほどかれ、バランスを崩した私は床にぺしゃりと座り込んだ。まだ体育館で騒いでいたみんなが、水を打ったようにシーンと静まる。
愕然とする私を、山口君は冷たい目で見る。すると山口君も自分の失態に気付いて、慌てて手を差し出す。
「ご、ごめん!蒼井さん怪我ない?」
謝りながら伸べられる手。私はさっきの行動にショックを受け、手を借りることがどうしてもできなかった。
『ごめんね、山口君。わがまま言っちゃって。仁花ちゃん、着替えて帰ろっか』
そう言って、無理して笑顔を作る。
顔の筋肉が強張ってる。
でも笑わなきゃ、みんな心配するから。
笑わなきゃ、涙が零れそうになるから。
『さ、仁花ちゃん行こ!』
「え、でも…」
『ひーとーかちゃんっ、早く行こっ!』
山口君と私を交互に見る仁花ちゃん。その腕を引いて女子更衣室に向かった。
後ろから追い掛けてくる足音が聞こえないことが、開いてしまった距離を表すようで。
悲しくなって泣きそうになった。