Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第26章 ★"ツン"と"デレ"《木兎 光太郎》
【蒼井 side】
どうしよう。どうしよう、どうしよう。
木兎がそんなこと考えてたなんて、私はなんにも知らなかった。そりゃ木兎だって男の子だし、色恋に関心はあるだろうけど。
けど、その相手は私じゃないと思ってた。
なのに。好きとかキスしたいとか、挙げ句の果てそーゆーこともしたいなんて。そんなの。
気付いたら布団を脱ぎ捨て、無意識のうちに木兎の頬にそっとキスをしていた。
離れれば、正面から見返す木兎の目。透き通ったそれは、はちみつにもべっこうあめにも琥珀にも見えた。映るのは、私だけ。
「…海宙」
『何、木兎…?』
「俺、お前のこと好きだわ」
『私も、たぶん、好きなんだと思う…///』
次の瞬間、えぇっ!?とブーイング。私だって頑張って言ったのに、木兎に、好きって。なのに、なんで?それが顔に出てたのか、木兎は口を尖らせてこう言った。
「なんで?とか思ってるだろ」
『うっ…』
「"たぶん"とか"だと思う"とかじゃなくて、なんつーかもっとこう、なんかあるだろ!」
言葉にできねー!と頭をわしわし掻く木兎。それで、分かった。あぁ、そうか。ごめんね木兎、私がはっきりしてなかったね。
だから、木兎にも分かるように。
『木兎、好き。ずっと、好きだよ…』
笑顔が似合う顔を両手で包み、おでこにそっと唇を寄せる。刹那、司会がくるりと180度回転して、ギシリとスプリングの音と同時に背中には固い感触。
木兎に押し倒されたと理解する。見上げる木兎は、むず痒そうな微妙な顔。
『ぼ、くと…?』
「…んだよ、それ。ずりぃ…デレるとか…」
『え?』
「だぁもう!俺も好きだっつってんの!」
『んむ!?』
言うと同時に唇に噛み付くようなキス。いくらパタパタ手足を動かしても解放されない。長いキスが終わって、木兎は言った。
「なぁ、海宙」
『ふ、はぁ…ぼく、とぉ?』
「海宙が欲しい、海宙を食いたい」
それは、今まで聞いたこともない、幼馴染みの声で。低く聞こえたその声に、色気を孕んだその声に、気付けばこくりと頷いていて。
獣みたいな目を光らせて、木兎は笑った。