Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第26章 ★"ツン"と"デレ"《木兎 光太郎》
【木兎 side】
俺には蒼井海宙という幼馴染みがいる。家が隣で、ガキの頃からしょっちゅう遊んだり泊まったりした仲だ。
そんな海宙は、美人でモテる。
"やまとなでしこ"という言葉がピッタリだと俺は思う。背中まである黒髪は光沢がある。勉強も運動もできる。海宙は高嶺の花だと同級生は言う。
俺的にはツンデレなのが良いんだよな~。たまにデレるとカワイイし。
煩悩を考えつつ話して歩く、そんな海宙との帰り道、である。
「なぁなぁ、海宙の家に行くのちょい久々なんじゃね?」
『あ、そうかも』
「やっほーい、ヘイヘイヘーイ!」
『木兎、うるさい…』
隣で耳を塞ぐ海宙。とことこ歩いて向かう先は、海宙の家だ。
すっかり慣れたその部屋は、前に来たときとあまり変わっていなかった。強いて言うなら、扇風機が置かれているくらい。
『よし、じゃあアンタの苦手な数学から』
うぃ~っす、とヤル気の無い返事をして数学の教科書を取り出す。範囲の関数のページを開くも、解読不可能。
「なーなー、カンスウってそもそもナニ?」
『え、そこからなの…』
一瞬海宙は気を失いかけたが、俺がなんとか引き留めた。それから海宙は俺の隣に座り、ノートにローマ字の式を書いた。
『まず、y=ax+bっていうのが一次間数の公式。bがないと比例の式になるの。ここまでは大丈夫かな?』
「ワカッタ!」
よく分かんないけど。
『で、二次関数は…』
海宙は後れ毛を耳に掛け、続きを説明する。あ、その仕草なんか色っぽいなぁ。そう考えていると、海宙は俺に目線を移し、眉間にシワを寄せて言う。
『ねぇ木兎。関係ないこと考えてない?』
「お、よく分かったな!」
俺はニカッと笑い、こう言った。
「海宙の髪って、いい匂いすんな!」
『………は?』
なんとも気の抜けた声を発し、海宙はキョトンとする。それからぶわぁっと一気に顔が赤くなった。
『ばっ、なに、言ってんのよっ!///』
「あ、照れてる~、かぁわぃ~!」
『からかわないでよ!』
それでも、キッと睨み付ける目には羞恥を見てとれるからやっぱりかわいいのだ。その後、指導方針がスパルタになった。