Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第26章 ★"ツン"と"デレ"《木兎 光太郎》
【蒼井 side】
埼玉にある森然高校へ夏休みに1週間の合宿へ行くことが決まったのは、梟谷で週末合宿をした翌日のことだった。それが昨日。
そして今日、男子バレー部の部室にて、私は幼馴染みである木兎光太郎渾身の土下座を見下ろしている。
彼曰く、
「海宙ッ、ノー勉の補習テストがマジでヤバイんだよ!頼む、教えてくれッ!」
ということらしい。周りには同級生やら後輩やらがいると言うに、アンタにプライド無いのか、プライドは。
そうは言っても180を越える長躯の彼が土下座とは、なんとも可笑しい。なにせ、普段見上げている相手を堂々と見下ろせるのだ。
黒い笑みを湛え、そして私は言う。
『補習テストぉ?アンタ何言ってんの、それって明後日だよ。ついにイカれて脳ミソがパンクしたのか、そうかそうなのか。まさかここまでバカだとは思わなかったなぁ。その脳ミソでノー勉とか冗談でも辞めてほしいんですけど(笑)ていうか前々から思ってたんだけど、アンタって危機管理能力が(以下略)』
云々かんぬん。丸々5分間たっぷり罵った頃には、灰と化している木兎。
『あー、スッキリした』
「俺、思ったんだけど」
『ん、木葉?』
「蒼井ってその容姿でかなり辛辣なこと言うよな、木兎には」
『それは…まぁ、ね…』
幼馴染み、だし。ちなみに、木兎は2分くらいしたところで心が折れたようで、三角座り。
ところで、補習テストは梟谷ならではだったりする。期末テストで赤点を取った者は、類似問題の再テストを行う。そして再度赤点を取った者は、夏休み中補習を受けることに。
そして、頭まで筋肉とバレーの木兎は、数学と英語で赤点。2教科分の再テストを受けなくてはいけないのだ。
木兎がテスト前数日に私に泣き付いてくるのは、今回に限ったことではない。むしろ毎回と言っていい。それをなんとか赤点回避させているのが、私。
『はぁ…エースが合宿にいないとか話にならないから良いけどさぁ…』
「マージか!?」
『洗剤のCM真似しないでよ。それにいつものことじゃないの。その代わり、今度サーティワンのクレープおごってね』
うぉー!と抱き付こうとする木兎を片手で制する。それを見た木葉と小見は、呟いた。
「手懐けられてるよな?」
「小見やん、それ、愚問」