Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第25章 三角幼馴染み《及川 徹&岩泉 一》
【蒼井 side】
走って部室を飛び出して、息が苦しくなるまで走った。立ち止まって息を整えると、そこは見慣れた通学路。
『はぁ、はぁ、っはぁ…』
電柱に寄り掛かりずるずるとしゃがみ込む。
今日こそちゃんと仲直りしようと思ったのに。ハジメとはぐずぐずと引きずってなんとなく気まずいまま今日を迎えた。
今日こそ謝ろうって思ったのに。でも何を謝るのかな?わたしはただ、今まで通りになりたかっただけなのに。
『どぉして、うまくいかないのかなぁ…』
うまく笑えるようにって、うまく話せるようにと、思って。持ってきたシュシュ。一日中ポッケに入れたままのそれを、そっと手のひらに取り出す。
去年、ホワイトデーにハジメから貰ったシュシュ。淡い緑に白のドットは、青城のユニフォームを思わせる。ずっと飾っていたそれを、特別に持ってきた。
少しでも、勇気を貰えたらって。
ハジメが持ってきてないって言った時、なんでか分からないけど、すごく、寂しかった。毎年ちゃんとくれてたのに、今年だけ忘れちゃったんだって、悲しくなった。
もう、前みたいに戻れない?
もう、前みたいに話せない?
もう、前みたいに、笑えないの?
『ハジメ…ずっと、一緒がいいよぉ…』
じわりと視界が滲み、小さく嗚咽を漏らしたその時。遠くから走ってくる人影が見えた。まだ寒いのにコートも着ないで、制服だけで走ってくるその人は。
「海宙―――ッ!!」
喉から絞り出すようにわたしの名前を叫んだ。目の前で急停止し、荒い息をし、それからわたしの肩をガシッと掴んだ。
『ハジメ…?』
「おい、一回しか言わねぇ。聞けよ?」
『う、ん…?』
すぅっと息を吸って、ハジメは言う。
好きだ。
それは、見えない鎖がほどける合図。