Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第25章 三角幼馴染み《及川 徹&岩泉 一》
その言葉に岩ちゃんは驚いたようだった。別に今に分かったことじゃあるまいし。あーもう、なんなんだろ、すごいイライラする。
「及川お前、どういうつもりで…」
「つもりもなにもないよ。2人のこと見てられないしね。大体始めっから分かりきってたことじゃん。岩ちゃんが海宙を好きで海宙が岩ちゃんを好きなのなんて」
唖然とする岩ちゃん。まさか、気付いてないなんて言わないよね。本当、岩ちゃんはそういうのに鈍感だよね。
でも、お願い、俺のために、
気付いてたって、言ってよ。
じゃないと俺、みじめだから。
すごく、自分をイヤになるから。
ずっと隠してた、想ってた俺が、
バカみたいじゃんか。
「な、だって。海宙はお前のことをずっと好きだと…」
「そんなわけ」
「さっきだって、抱き付いてて…」
「あれは一種の愛情表現でしょ。岩ちゃんにだってしてたじゃん、試合に勝った時とか」
口を金魚みたいにパクパク。あれ、岩ちゃん本当に気付いてなかったんだ。
「とにかく!今から追いかければ間に合うんじゃないの?」
「いや、でも、約束…」
「いい加減にしろよッ!!!」
突然怒鳴った俺に、岩ちゃんはギョッとする。残ってたマッキーとまっつんもビックリしてるけど、そんなの構うもんか。
「いつまでそうやってウジウジしてんの、そんなに情けない岩ちゃん、俺の知ってる岩ちゃんじゃないよ!」
「テメェが、俺の何を知ってンだよ!」
「知ってるよ!全部知ってるよ!」
白鳥沢に負けたのを自分のせいにしたのも。
人一倍責任感が強いのも。
俺を隣で支えてきてくれてたのも。
揚げ出し豆腐が大好きなのも。
ずっと、海宙を想ってるのも。
「岩ちゃんの全部、全部全部、俺は知ってるんだよ。何年間、幼馴染みやってきたと思ってるのさ。もういい加減―――」
―――自分の気持ちに、素直になりなよ
そこまで一気に捲し立てるように言う。シンと静寂が部屋に漂う。そしてその沈黙を破ったのは、岩ちゃんだった。
「…悪い及川、俺、行くわ」
「おう、行ってこい!」
背中をパシッと叩く。岩ちゃんは俺に一言呟いて、エナメルを肩に部室から飛び出した。
これで、ようやっと。
「頑張れよ、岩ちゃん」
あとは、お前次第だからな。