Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第25章 三角幼馴染み《及川 徹&岩泉 一》
ぽろぽろと零れる涙は止まることを知らない。ぽたりぽたりと雫が落ちて、雪の溶け残る地面に染みを作る。
「おい泣くなよ、頼む。俺、海宙に泣かれるのにすげー弱いんだよ…」
『っく、ごめ…っだっ、てぇ…』
一度泣いたら止まらない。ふえぇん、と幼子のような声を上げて、わたしは泣いた。
ハジメがわたしの頭を自分の肩に押し付けて、背中をとんとんとあやすように叩く。心地好いリズムはわたしを落ち着かせた。
その温かさに甘えるように、わたしはハジメの背中に手を回した。
「ずっと、好きだったんだ。ガキの頃からずっと、海宙だけを、好きだった」
『わたしも、好き。ハジメだけ、ずっと好きだったの。今も、好き…』
わたしをそっと放すと、ハジメはその手で髪を一撫でした。懐かしいようなその感覚に、わたしはすっと目を細める。
それからハジメは、使い古したエナメルからピンク色の箱を出した。細長い長方形のかたちをしたそれを、わたしにずいと差し出す。
「家に置いてきたなんてのはウソだ。本当は渡そうか迷ってたんだ。お前を悲しませた俺に、あげる資格なんて無いと思って…」
『開けて、いい?』
こくんと頷く。それを見てそっと箱を開く。
そこにはネックレスが入っていた。シルバーのネックレス。モチーフはカギと王冠。王冠の中には光る何かが入っていた。
『わぁっカワイイ…カギと王冠になってる。中に青いストーン入ってるんだ』
シャラリ、と持ち上げれば、陽光に反射して青いストーンがキラリと輝いた。
「それ、意味があるんだ。知ってるか?」
『どんな?』
訊き返すと、ハジメは少し照れたように笑った。それから、こう言った。
「"心の扉のカギを開く"ってことらしい」
『え…っ///』
「俺を海宙の心ン中に入れてほしい。そんで、欲を言ったら、それはずっと俺だけでいてほしい」
『ハジメ…っ大好き!』
がばっと抱き付くと、体勢を崩しながらもしっかりと抱き止めてくれた。
それから耳元に降る声。
「俺と、付き合ってください」
『もちろん、よろしくっ!』
一度は躊躇った想い。
だからこそ、通じ合った喜びは、
計り知れなくて。
もう一生、ハジメの側から離れるもんかと。
そう、思った。
END.