Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第25章 三角幼馴染み《及川 徹&岩泉 一》
【及川 side】
そして迎えた卒業式。桜が咲くにはまだちょっぴり早く、肌寒い季節。3年間通い、勉強や部活に励んだ校舎も、これで最後。
みんなで写真を撮って、部活のやつらと集まって。そしたら、金田一はお別れはイヤですと泣いて。矢巾と渡も泣きそうだった。
「はーいみんな。俺はたまに顔出すし、なにも今生の別れってわけじゃないよ」
「むしろ俺はこいつと別れたい」
「岩ちゃんッ!?」
『あははっ、卒業式も変わんないね』
そう言って、みんなで顔を見合わせて笑った。海宙は岩ちゃんとバレンタインの日にケンカしたらしいけど、今はその影も無く、仲は良さそうに見える。
けど俺には分かった。
2人とも、まだ、引きずってる。
あの日はバレンタイン。つまりそれは、想いを伝える日。だからきっと、海宙は岩ちゃんに言おうとしたんだ。それを、岩ちゃんは全力で止めた。
"ずっと友だちでいよう"
3年前に交わしたその約束が、あたかも呪いのように俺たちを縛り付けている。どこかぎこちなく話す幼馴染み2人を見詰めて俺は思った。
もうそろそろ、良いのかもしれない。
呪いを、壊しても。
人を想う気持ちは時に人を惑わせる。俺がその例だ。岩ちゃんと海宙をくっつけたくなくて、あんな約束を言った。
もちろん、友だちでいたいという気持ちに偽りは無い。でもだからこそ、友だちのままがいいと思った。それが一番、楽だったから。
「そろそろ、変えないと、なぁ…」
『は、何が?』
訝しげに俺を見遣る海宙に、パタパタと手を振って見せる。
「ううん。スマホのね、調子がおかしいから買い換えないとってハナシ」
『ふぅん…ね、明日のことなんだけどね』
「あ、お菓子作ってきてね!」
『バレンタインに作ったじゃん!』
「それとこれとは別なのー!」
えぇー!?と口を尖らせる海宙。俺が膨らんだほっぺをつっつくと、不服そうにしていたのが、笑顔になった。
その笑顔に、プレゼントにと買った桜のイヤリングを重ねる。海宙の生まれた頃咲き誇っていたという、桜の花。海宙は喜んでくれるだろうか。
ねぇ、海宙。
俺の心をこんなにさせるのは、
お前だけだよ。
だから、さ。
俺を、選んでくれないかな?