Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第25章 三角幼馴染み《及川 徹&岩泉 一》
【岩泉 side】
いつもありがとう。
そう笑う海宙は、天使かと思うくらいにきれいな笑顔をしていた。
「やったぁ、チョコだ、チョコだー!」
『トオルはファンの子に貰ってるでしょ』
「海宙のはベツモノ!ね、岩ちゃん」
「おう」
照れっとしてはにかむ海宙。それから口を開き、ウィンクした。
『ちなみに、2人のだけハートになるよ』
「「ハート…?」」
不思議に思い、ラッピングされたチョコを見る。透明のフィルムの向こうには…なるほど、2つくっつけたらハート模様になるだろうデコレーション。それと俺の背番号とエースという文字も。
嬉しくてニヤけそうになる。すると、隣の及川が叫んだ。
「やったー!俺たちだけだ!みんなー!」
『ちょ、トオル!』
チョコを食べるあいつらの方に駆ける及川に呆れた視線を送る海宙。俺も苦笑いして海宙の隣に並んだ。
「ったく、及川のやつは…」
『ふふ。トオルは変わんないねぇ…』
そう笑う横顔は、何かを懐かしむようで。あいつは昔っからそうだったなぁと、変わらないなぁと、俺も思った。
不意に、くいくいっとジャージの裾を引かれる。見下ろせば、海宙が俯いていた。
「…海宙?」
『うん…』
そっと顔を上げる海宙。その表情に、どくんと心臓が跳ねた。何かを恥じらうような、見たことのない顔。薄く色付いた頬と言葉を発する唇から、目を離せない。
『あのね、ハジメ。訊いてほしいの…』
「お、おう…?」
そして、なんとなく予感した。
『わたしね、トオルとハジメが好きだよ』
「お、う?」
何、言ってンだよ。
『ずっと好き。だって、幼馴染みだし、友だちとして、好きだよ』
「…おう」
やめろ、そんなこと言うな。
『それでね、わたし、気付いたの』
「何に、だ?」
やめろ、やめろ、やめろやめろやめろ。
『ハジメのこと、幼馴染みじゃなくて…』
頼むから、海宙…ッ!
すぅっと息をのむ音が聞こえた刹那―――
「その先は、絶対に言うなッ!!!」
―――俺は、怒鳴っていた。