Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第25章 三角幼馴染み《及川 徹&岩泉 一》
【蒼井 side】
季節は巡り、2月も初旬。すっかり雪に覆われた町は、見渡す限り真っ白だ。
クリスマスには、トオルにハジメ、それと花巻と松川も混ざって5人でクリパ。プレゼント交換では、花巻が選んだらしいスポーツタオル。モノクロのデザインは気に入った。
お正月は、幼馴染み3人で初詣に行った。トオルと割り勘して、ハジメの合格お守り買ったり、神社で配布していた甘酒を飲んだり。
そしてそして、恋する乙女の一大イベント、その名はバレンタイン。
『どうしよう、かなぁ…』
バレンタインまであと、2日。自室の机につっぷして沈黙。水色のMP3から流れてくる Jーpopは右から左に素通りして、歌詞が全然入ってこない。
パラリと開いた本の表紙には"ホットケーキミックスで簡単おかし!"とカワイイ文字が印刷されている。さらにその隣、"チョコで作ろう、美味しいお菓子"と書かれた本。
いくつか付箋を付けたそのページを、それとなく眺めてみる。シフォンケーキ、ガトーショコラ、マフィン、トリュフなどなど。
去年は何あげたっけ?ああ、そうだ。部活が忙しくて面倒だったから、チョコチップをこれでもかとふんだんに入れたクッキーだ。
差し入れた男バレにも意外と好評で、何人かはホワイトデーのお返しもくれた。
トオルからはキャラもののハンカチ。ハジメはオシャレなシュシュをくれた。どっちも嬉しくて使うのがもったいなくて、部屋の棚に飾ったままにしてある。
『今年はどんなの作ろうかなぁ…』
パラパラと捲るページ。ふと目を留めたそこには、バーケーキと書いてあった。ホケミ(ホットケーキミックスの略)で作れる簡単なもので、溶かして入れるチョコを変えればホワイトにもビターにもアレンジできそう。
『うん、これにしよっと!』
さっそく材料をチェック。うわ、バター結構使うなぁ。お母さんに怒られそう。ま、お小遣いで買うから良いか。明日は買い出しかなぁと思いつつ、ベッドに潜り込んだ。
その夜、夢を見た。
バレンタイン、チョコを渡すとトオルとハジメに告白される夢。返事をできずに狼狽えていると、少しずつ2人の姿がぼやけていく。
行かないでと叫んだつもりでも声にならない。悪夢のようで飛び起きれば、両の頬を涙がつぅっと、伝っていた。