Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第25章 三角幼馴染み《及川 徹&岩泉 一》
【岩泉 side】
及川からの誘いを断り、昼練をしているであろう体育館に向かう。放課後は用があるが、今は別だ。超ヒマだ。
「おーっす、やってっかー」
「岩泉さん!」
『あ、ハジメじゃん!』
体育館の扉を開く。と、そこにいたのは、金田一と無理矢理連れてこられたっぽい国見、それから矢巾と渡と海宙だった。
即席でバドのネットを使い、2対2で練習をしていたらしい。ちなみに、国見はコートの外で体育座りだ。
『ねー、ハジメもやろうよ。国見入ったらさ、ちょうど3対3、できるよ!』
「俺を巻き込まないでください」
『いーじゃん、国見もやろうよー!』
「おー、やるやる。国見もな!」
ニッと笑えば、朗らかな笑顔を返す海宙。昔と変わらない、でも少しだけ大人びたその笑顔に、切なくなった。
こいつの眼中に、俺はない。
だってこいつは、及川が好きだから。
中学に入ってから及川は急激にモテ出した。そのハイスペックなルックスと、その物腰から"王子様"的な扱いをされた。海宙は海宙で、気さくなところや笑顔やらが人気で、魅了される男子も少なくなかった。
多くの女子が"及川くーん"と黄色い声を掛け、そこそこの男子が"蒼井さん"と期待を含んだ声で呼んだ。
もちろん、2人はバレーばっかでそんなのは眼中にもなかったけど。おまけに言えば、俺もバレーばっかだったけど。
と、物思いにふけっていると、ズドッと重いスパイクの音がすぐ横を掠めた。すんません、と金田一が謝るのが、どこか遠くから聞こえるよう。
『おーい、ハジメー!』
「あ?」
『いやいや。あのね、ぼけっとしてたらトオルみたいに顔面にスパイク食らうよ?』
「あ、あぁ、悪い」
さっきのは金田一のスパイクだったのか。また打点上がってるな、矢巾のトスでもいけそうだな、と日に日に成長する後輩に思う。
来年、コートに俺たちの姿は無い。でもきっと、こいつらなら良いチームになるだろう。
『ほら、金田一もいっぽーん!』
「ハイッ!」
貪欲に勝利への力を求めるその姿に、俺は珍しく微笑んでいたとか、いないとか。