Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第25章 三角幼馴染み《及川 徹&岩泉 一》
牛乳パンの最後の1欠片を口に放り込み、自販機で買ったお茶を飲む。爽やかな喉ごしの600ml は、最近のお気に入り。
それから笑顔を浮かべ、お弁当のからあげを頬張る岩ちゃんに話し掛ける。
「ね、岩ちゃん。今日こそ海宙誘ってまたバレーしようよ」
「残念、俺行けねーから」
「なんで?」
きょとんとする俺に、岩ちゃんは苦笑いしてみせた。それから机の中から分厚いテキストを引っ張り出す。
「生憎、推薦で行けるどっかの誰かさんとは違うんでね。センター試験に向けて勉強しなきゃいけねーんだよ」
「えぇ、1日くらいいーじゃん」
「昨日も部活行っただろーが!」
おら、とっとと帰れ!げしっと俺を足蹴にすると、お弁当を片付けて岩ちゃんは教室から出ていってしまった。いつもなら追いかけるその背中を、俺は見送った。
まだ、好きなんだろうな。
他の女子とはやっぱり接し方が違う。その雰囲気が、話し方が、違うから。海宙も海宙で、岩ちゃんが好きっぽいしなぁ。
用も無くなったことだしと、教室から出て行くあてもなく校内を歩く。屋上に上がると、寒いからか人の姿は無かった。
スマホのスケジュールアプリを起動させる。今は11月であと1週間もすれば12月。年が明けたら1月で、すぐに2月はやってくる。そして3月はあっという間に卒業。
「どっかで、コクろうかな…」
そう呟いたところで、大きな矛盾に気が付いた。ずっと友だちって、約束したんだ。
そんなことしたら、海宙に告白したら、俺が約束破りになっちゃうね。
そう思い、嘲笑を浮かべた。
曇天広がる11月の風は、身も斬るように冷たい。まるで、決して破られることのない、氷の約束のように。