Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第25章 三角幼馴染み《及川 徹&岩泉 一》
【及川 side】
最近、海宙がヘンだ。放課後、部活に顔を出そうと声を掛けると、用事があると断られる。いつもなら帰りは岩ちゃんと俺と一緒で寄り道とかするのに、一人でさっさと帰っちゃう。それに、話し掛けてもなんだか上の空で。
「…ということで、どう思う、岩ちゃん?」
昼休み、岩ちゃんのクラスに押し掛けてそう訊く。購買の牛乳パンをかじりながら。
「ンなこと知るかよ。好きなヤツができたとかじゃねーのか?」
「えぇッ!?岩ちゃんと俺に断り無しに!?」
「イチイチ許可とか要らねーだろがッ!大体、幼馴染みだからってそこまで口出す権利なんてのは俺らにはねーだろ」
「うぐっ…」
的を射た発言に、ぐうの音も出ない。でも、海宙に好きな人ができたなら、俺は全力で応援したいなぁ。
―――相手が、岩ちゃんじゃないならね。
相手が岩ちゃんだと、ちょっと危機感あるかもなぁ。いや、ちょっとどころじゃないか。
なんだかんだ言いつつも、岩ちゃんはモテたりする。バレンタインにチョコ貰ったり(俺のが全然多いけど)、たまぁに告白されてたり(やっぱり俺のが全然多いけど)。
それに、海宙に関しては中学の時のこともあるし。あの関係が壊れるのがイヤだったっていうのもある。でも一番は、海宙を岩ちゃんに盗られたくなかったから。
俺が海宙を、好きだったから。
勿論、その気持ちは変わらない。今日も昨日も、去年も一昨年も、ずっと前も。
でも、海宙を好きなのは俺だけじゃない。
岩ちゃんも、海宙のことが好きだ。
ただ残念なことに、バレーばかりでそういう色恋沙汰に疎かった2人は、お互いの気持ちがお互いに向いていることを全く知らない。
岩ちゃんは海宙が俺を好きだと、海宙は岩ちゃんが自分に興味が無いと、勘違いをしている。
三角関係ってこういうのなのかな、といつからかぼんやりと思うようになった。
俺と、岩ちゃんと、海宙。
その三角をお互いの"好き"が飛び交ってる。
それは、ねじれの位置にあるように。
見えるけど、
分かるけど、
絶対に交差しないんだ。
交差したら、いけないんだ。
だって、約束したもんね?
"ずっと3人、友だちでいよう"ってね。