Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第23章 ★"10年"と彼女《花巻 貴大》
名前を呼ばれて、たった一言"好き"。それだけなのにとてつもない破壊力だ。
「~っ///」
バレーの試合、一発目にノータッチエースを決められたような。そんな悩殺級の笑顔と共に彼女は言った。俺が、好きだと。
それから言葉を続ける。
『久し振りに会って気分が舞い上がってとか、気持ち良かったからとかじゃなくてね』
貴大さんを、知りたいと思ったの。
『前と変わらないところできゅんとしたり、知らない姿でやっぱりきゅんとしたり』
もっと、もーっと、貴大さんを知りたいの。
『だから、あたしと付き合っt…』
「やっぱゴメン。そっから先は、俺が」
今度は彼女の口を俺が塞いだ。こくりと頷いたのを確認し、息を整える。
ヤベぇ、俺、今までどんな風にコクってたっけ。つーか海宙、なんであんな平然として好きとか言ってんだよ。
ばくばくと心臓が耳の真裏にあるようにうるさい。それに負けないように、強く言った。
「海宙が好きだ。付き合ってくれ」
悩んで悩んで言ったのは、
10年前と、同じ言葉。
涙を流し何度も頷きながら、海宙は俺の首に手を回してきた。俺も背中に手を回し、ぎゅうぅっと抱きしめる。
なんか、すげー幸せ…
想いが1つになって、幸せだと感じて、安堵のため息がはぁっと漏れる。と、不意に唇に柔らかいものが触れた。
『おはようのキスだよ、ダーリン?』
「おはよう、ハニー、とか?」
おどける海宙に、俺も答える。それから顔を見合わせて笑った。一頻り笑って、それからチェックアウトまでに時間が無いことに気付き、慌てて支度を始めた。
交代でシャワーを浴びて、身支度を整えて。途中で俺の腹がぐうぅ~と鳴って、しばらく海宙が爆笑して。丸々5分間笑って、それから部屋を後にした。
エレベーターに乗っても、海宙はまだ笑っていた。
『ぐうって…ぷふっ、くふふふ…』
「お前なぁ…笑いすぎだっつの」
照れ隠しに頭を小突く。えっへへ~と言いながらにかりと笑う海宙が眩しくて、慌てて目を逸らす。
『貴大さん、どったの?』
「や、なんか…かわいくて、直視できねえ」
『あ、りがと…///』
付き合いたてホヤホヤのカップルですか、とつっこみたくなるような雰囲気の中、エレベーターが到着するのを待った。