Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第23章 ★"10年"と彼女《花巻 貴大》
Ⅲ"夜のホテルの情事の事情。
【蒼井 side】
貴大さんはあたしの腕を掴み、ぐんぐん歩く。コンパスが長いから、あたしは小走りになって追い掛ける。
『たか、ひろさんっ、待って、速いよ!』
「ごめん、無理。余裕無くて、待てない」
そして最寄りのラブホテルに入る。貴大さんは部屋を取り、エレベーターに乗って2階の部屋に向かう。
カチカチと忙しなくボタンを押す。繋いだ手はぎゅっと握られていて。それが絶対に逃がさないと伝えてくるようで、身体が火照る。
部屋に入り、ドアを閉める。直後、ドアに押し付けられ、気が付けば唇を奪われていた。
さっきのよりも、長くて、濃くて、深い。上手くできなくて酸素を求めると、自分のものかと疑いたくなるような声が漏れた。
「声、我慢しなくて良いから」
そうは言われても、我慢しちゃって。抉じ開けられた口からは、舌の絡み合う音と、あたしの荒い呼吸音がしている。
ようやく解放されると、あたしはくたりと貴大さんにもたれ掛かった。おいおい、と上から苦笑が聞こえた。
「こんなんでへばってて平気か?」
『そ、なこと、無いもん。まだ平気…あ…』
「平気って言ったの、海宙だから、なっ!」
『きゃ!?』
膝裏と背中を手で支えて、あたしの体を持ち上げる。わぁ、お姫様だっこ、なんて喜ぶ暇も無く、あたしはベッドに転がされた。
貴大さんはあたしに馬乗りになり、ブラウスのボタンを外そうとしてくる。その手を押さえ、ふるふると首を横に振った。
「…まさか辞めるとか言わねえよな」
『ちが、違うの。シャワーだけ、浴びたい』
「どうせこれから汚れるし汗かくだろ」
『じっじゃあ、歯磨きだけでも…』
すがるような目で見詰めれば、貴大さんは、はぁとため息を吐いた。あたしの上から退けたので、肯定と解釈し、5分だけ!と叫んでからバスルームに駆け込んだ。