Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第23章 ★"10年"と彼女《花巻 貴大》
グラスを持つ手を躊躇いがちに止める、と。
『やら!まだ飲む!』
「はぁ…」
海よりも深いため息。仕方無くもう一杯だけ許可を出した。
スクリュードライバーは店によっては度数がけっこう変わる。旨いから飲んでもらおうと思ったのに、ここは度数が高いんだった。
「迂闊だった…」
この店に来る前からほろ酔いだったのだ。こうなるのは目に見えていたのに。
『帰ろぉ、貴大しゃん?』
「ハイハイ、帰るぞ」
何が"貴大しゃん"だよ。俺は理性を掻き集めて、襲い掛かりたいのを堪えた。店を出て時計を確認すると、終電は無さそうだった。
「ったく、12時とっくに過ぎてんぞ」
『電車無いのぉ?』
「あるわけねーだろ…」
『んー、じゃあホテル泊まろぉ?』
「ハァ!?」
さも当たり前のように言ってくる海宙に、驚愕する。付き合ってる訳じゃあるまいし。
「いや、でも、俺ら…」
戸惑ってそう言うと、俺の腕にぎうっと抱き付く。海宙が胸の膨らみを押し付けている。煽ってるのか?そんなの気にしてない海宙は、ますます強く抱き付き、口を尖らせた。
『むぅ、前の彼はすぐホテル連れてってくれたもん。貴大さんはダメなのぉ?』
「は………?」
"前の彼"。その存在が、俺のくすぶっていた心に一瞬で火を付けた。もう、止めてやらない。もう、止まらない。
俺はニヤリと口許に笑みを浮かべ、海宙を見下ろす。
「…上等。覚悟しろよな…」
『…んっ……!?』
直後、噛み付くように唇を合わせた。夜中とはいえ、中心街だから人通りだってある。でもお構い無しとばかりにキスをした。
強張っていた身体も唇に舌を捩じ込むと、膝が途端に砕けた。ふらつくのを俺のYシャツの裾を握って、必死に堪えている。
甘くて、蕩けるような、キスだった。
『っはぁ、貴大、さん…///』
「あークソ。んな顔すんな止まんねぇ」
俺がそう言うと、Yシャツをぎゅうともっと強く握った。それから、肩を震わせ、届くか届かないかの小さな声で呟く。
『と、止まんなくて、良ぃよ…///』
「…後悔、しても、知らねえからな」
『するわけ、無いじゃん…』
ぷつん。聞こえたのは、
最後の理性の切れた、オト。
気が付けば、俺は海宙の腕を引いて近くのホテルに入っていた。