Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第23章 ★"10年"と彼女《花巻 貴大》
Ⅱ"10年振りの。
【花巻 side】
及川と、岩泉と、松川と、俺。
久し振りに4人で集まって酒を交わす。及川がバレーボール日本代表で忙しいから、全員で集まるのは、たしか半年振り。
他愛も無い話をして、バカみたいに笑って。そうやっていると、ふらふらと足取りの怪しい女が寄ってきた。
「あのぉ、バレーの及川さんですよね?」
「あ、俺のこと知ってるの?」
「もちろんですよ!だってぇ、イケメンでスゴいセッターって有名ですもん!」
照れるなぁ、なんて満更でも無い及川。はしゃぐ2人を岩泉がたしなめる。
するとそこへ及川に絡む女を連れ戻しに、一緒に来たらしいもう一人の女が寄ってくる。
その姿を見た瞬間、息が、止まったと思った。
その女は、あいつだったから。
もう、会えないと思っていたから。
「海宙………?」
『貴大、さん………』
その声は、俺の知ってるものと違って。俺の胸までしかなかった背も、少し伸びたのか肩まであって。何より、綺麗だった。
染めたのか、明るい茶色の髪は毛先がくるりとカールしていた。垢抜けて、ぐんと大人っぽさが際立って。グロスのせいなのか、つやつやの唇が、ひどく色っぽかった。
「…あ、久し振り、だな」
『うん、そうだね…』
あまりに突然すぎる再会に、口が動かない。それは、向こうも同じようで。でも、2人とも、きっと嬉しそうな顔をしている。
「元気だったか?」
『あたしは、元気。貴大さんは?』
まだ、そう呼んでくれるのか。そんなことに喜びを覚えつつも、頷いた。
「ちょー元気。仕事もノってるしそっちは?」
『あたしも。プロジェクトが1つ成功して今日はそのお祝い的な』
なんとなく近況を報告して、すると及川が興味津々で口を挟んできた。
「マッキー、その子って…?」
「あぁ、元カノ。高3の時にさ、中学生で付き合ってた子がいただろ?その子」
『どうも、お久し振りです』
お辞儀をする海宙。律儀で礼儀正しいその辺は、ちっとも変わっていない。
するといつの間にいなくなっていたのか、さっきの女が海宙を呼びに来た。
「蒼井さーん、二次会どうするー?」
『あ、えと…』
俺の顔を見て、逡巡して。それから言った。
『ごめん、あたし抜けるね』