Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第23章 ★"10年"と彼女《花巻 貴大》
中3だったあたしには、高校生の兄がいた。工業高校のバレー部に入っていて、その影響であたしもバレーは好きだった。
いっけーいけいけいけいけ青城!
ゴーゴーレッツゴーレッツゴー伊達工!
コート内での駆け引きに劣らないくらいの応援合戦。県内でも指折りの強豪相手にストレートで負けてしまったものの、兄のチームは死闘を繰り広げ、善戦した。
兄に一言、お疲れさまと言いたくて、体育館の出入り口に向かう。角を曲がった時、どすんと誰かにぶつかった。
『っぶ…』
「うお!?」
後ろによろけ、ぺたんと座り込む。すると上から悪い、と降ってきた。差し伸べられた手をありがたくお借りし、立ち上がる。
そこには、兄と同じかそれより背の高い、3番のピンクっぽい髪の人がいた。
「前見てなくて…ケガとか、無い?」
『はい、平気です。あたしこそ、ご…』
「あー!マッキーがナンパしてる!?」
ごめんなさい、と言おうとして遮られる。声の主は、青城のキャプテンだった。その後ろからチームメイトたちがどやどやと来る。
『あ、青城の…』
「もしかして及川サンのファn…」
「ンなわけねえだろ、クソ川ッ!」
4番の人がドスッとみぞおちを殴る。慣れているのか、キャプテンさんはヘラヘラと笑っていた。ポカンとするあたしに、3番さんは苦笑いした。
「賑やかで、悪いな」
『いえ。あの、貴方は何年生で…?』
「俺?3年だけど。君は?」
『3年、あ、中学の』
勘違いされそうだったので、中学の、を強調しておいた。それから青城の人たちと何故か仲良くなっていた。携帯のアドレスを教え合うくらいに。
そこで知り合ったのは4人。ぶつかったのは花巻さんという人だった。どういうわけか花巻さんとはその後も交流があった。
花巻さんが、貴大さんに。
海宙ちゃんが、海宙に。
そう、変わるのに時間はかからなかった。そしてクリスマス、イルミネーションの綺麗な
ツリーの下で告白された。
「海宙が好きだ、付き合ってくれ」
ストレートで真っ直ぐで。なんて男らしい告白なの、ときゅんきゅんした。
初めての彼氏との生活はそれなりに楽しかった。でも、彼が県外の大学に進学すると、連絡も途絶えがちになり、恋は自然消滅という形で終わった。