Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第23章 ★"10年"と彼女《花巻 貴大》
Ⅰ"居酒屋にて。
【蒼井 side】
1ヶ月振りのデート。そこで彼に言われたのは、思いもよらないことだった。
俺たちもう、別れよう。
同棲して分かったけどさ、
やっぱ、合わないよ、俺ら。
大学を卒業すると同時に、同じ学科の彼に告白された。仲も良く、羨ましがられるカップルになった。
でも、お互い新入社員として働くにつれてすれ違いが増えた。同棲しているのに顔を合わせる度に口論を繰り返すようになった。
でも、また前みたいになれると思っていた。だから、彼の一言は青天の霹靂だった。
何が合わないよ。
知ってるんだからね、あたし。
貴方に、他にオンナノコがいることなんて。
そう言えたらどれだけ楽だったのか。でもあたしは、そんなことは顔に出さず、困り果てる彼に、いつもと変わらぬ笑顔を向けた。
あたしも、ごめんなさい。
仕事のせいにするのもだめだけど、
やっぱり、合わなかったのね。
これで、終わりにしましょう。
精いっぱいの強がりは、泣き顔を隠す仮面のようにあたしの心を覆った。
一緒に暮らしていた部屋をその月限りで解約し、それぞれに家を探した。幸いすぐに見付かったので、引っ越しをすることに。
彼との想い出の品々、勿体無いけど、それらは全てゴミとして捨てた。写真もマグカップもピアスも服もタオルも、全部、全部。
心にぽっかりと穴が開いたようだった。浮気した彼への、せめてもの強がりだったのかな、と今では思う。
それが、つい1週間前のことだった。
『んもぉ~なんなのよぉ!』
と、絶賛あたしは酔っぱらい中。俗に言う"やけ酒"ってヤツですね、ハイ。その犠牲になっているのは、同期の桃香ちゃん。
「はいはい、つらかったねぇ」
『むぅ、適当なんだけどぉ。いいもん。今日はトコトン飲んでやるんだから、あのクソッタレのアンポンタンめ』
そう言って生ジョッキをおかわり。先輩が、蒼井は良い飲みっぷりだなぁ、と感心する声を漏らす。
いつにも増して、ひどい口調。ボロボロの心境でお酒を流し込む中、ふと思い出した。
中3の、とある恋愛事情のことを。