Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第21章 誕生日と彼女《金田一 勇太郎》
そして放課後。玄関で待ち合わせをして、彼女の姿を見付ける。名前を呼び、手を振ると笑顔が返ってくる。なんか、嬉しいな。
「悪い、遅くなったな」
『ううん、今来たとこだから』
「そっか、なら良かった」
靴を履き替えて校舎を後にする。それから、海宙がちょっと行きたい所があると言うので、寄り道をすることに。
向かったのは、学校近くの高台にある公園。
「ここって…」
『そう。勇くんが中学の頃にわたしに告白してくれた場所だよ』
夕陽がキレイで、見張らしも良い。俺の好きな場所だったから、ここで告白した。
そのことを思い出していると、海宙は水色の包みを取り出した。そしてとびっきりの笑顔と共に、俺に差し出す。
『勇くんっ、お誕生日おめでとうっ!』
「え、俺に…?」
『もう、他に"勇くん"なんて呼んでる人いないでしょ?ほら、開けて開けて!』
早く開けるように急かされ、いそいそとリボンをほどき、中身を取り出す。そこにはずっと前から欲しかった物があった。
「すっげ!え、これマジでくれんの!?」
『うん』
「え、これめっちゃ高いやつなのに」
『そ、だからバイトしてたの。どうしてもプレゼントしたくて。でも、そのせいで一緒にいる時間を作れなくて…ごめんね』
そんなに俺のことを思ってくれてたのか。なのに、俺はなんてバカだったんだ。
そう思うと、俺を見上げる彼女が愛しくて、愛しくて堪らなくなって。手を伸ばし、腕の中に閉じ込める。
「ありがとう、海宙…」
『う、ん…』
「俺な、嫌われてて今日別れ話するんじゃないかって思ってた。信じてあげれなくて…ありがとうすげぇ嬉しい」
そう言うとこくり、と腕の中で海宙が頷く。ふと思い付いた俺は、もう1つだけプレゼントをねだった。
「なぁ、もいっこプレゼントくんね?」
『ん、何?』
「ちょい目ぇ瞑ってて」
『うん…』
目をぎゅーっと瞑る海宙。その唇にそっと自分のを重ねた。触れて、感じた体温に、どくんと心臓が跳ねる。すげえ、柔い。
恋人になって初めてのキス。恥ずかしさでお互いに頬を染める。それから笑って、もう1回抱きしめた。
「こんな俺だけど、これからもよろしくな」
夕陽が、キラキラと2人を照らしていた。
END.