Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第21章 誕生日と彼女《金田一 勇太郎》
【金田一 side】
今日は部活が休み。だから駅前に出掛けた。サポーターを買おうと思い、スポーツショップを覗き、その帰り道。
俺の目に飛び込んできたのは、愛しい彼女の姿。でもそれは、一番見たくない形だった。
「なん…だよ、それ…ッ」
あまりの衝撃に、持っていた袋をどさりと落としたのにも気付かなかった。
カワイイ服を身に纏った海宙。楽しそうに笑っている。だが、その笑顔の向けられる先には及川さんたち。
「ハッ、そういうことかよ…」
どういうことか、やっと分かった。
ずっと話せなかったのも、
ずっと会えなかったのも、
全部、全部、ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ、
及川さんがいるからだ。
ひねくれてる?んなの知るか。現にホラ、俺じゃなくて別の野郎とつるんでる。結局、俺の想いだけが一方通行だったんだ。
「なんかもう、いいや…」
自嘲気味に嗤い、それから海宙たちに背を向ける。裏切られてツラいのに、不思議と涙は出なかった。そして、逃げ出すように全力で走り出した。
―*―*―*―*―*―*―*―*―*―
家に帰り、ただいまも言わずに自室に駆け込む。ボフン、とベッドに仰向けに倒れる。それから何気なくスマホをいじり、ピクチャーを開いた。
俺の撮った写真、そのほとんどが海宙の写真だった。
アイスを食べてる写真、国見と3人で昼飯を食ってる写真、初めてのデートで行った水族館での写真。どこを見ても海宙、海宙、海宙。
「なんで、こんな…っく…う、くそ…」
なんで今頃になって、泣いてんだよ…
「ごめ、俺…くっ、やっぱ、ムリだ…」
お前を、嫌いになんて、なれなかった。
思い出すのは、笑顔ばかりで。
いつも、楽しそうで。
好きだという気持ちと情けないのとが、
ぐっちゃぐちゃになって。
それで気が付く。
やっぱり、海宙が好きなんだと。
明日、仲直りしよう。きっと何か、俺に原因があったんだ。ちゃんと言えば、それに応えてくれるハズだ。そしてまた、いつもみたいに戻れるハズだ。
そこまで考えて、母さんに晩飯だと呼ばれたので、スマホを放り出して部屋を出る。
スマホの液晶には、眩いばかりの笑顔を浮かべる海宙の姿があった。