Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第20章 ★文学少女の恋愛論《二口 堅治》
【蒼井 side】
何が起きたか、分からなかった。
ほんの刹那、二口先輩の雰囲気が代わったと思ったら、唇にやわらかいものが触れていた。それが彼の唇だと理解するのに、数秒もかからなかった。
だって。
視界いっぱいに、二口先輩。
『…ん……んっ、ふ…』
呼吸ができず、うっすらと隙間を作って酸素を求める。自分のものとは思えない甘い声が出た。ぞくり、背筋が震える。
何、こんなの、知らない。知らなかった。
ただ唇がくっついてるだけなのに、
キスしてるだけなのに、
どうして、こんなにも、好きが溢れるの?
押し倒した私から、そっと離れる二口先輩。私の息は上がっているのに、先輩はけろりとしていた。
『堅治、さん…///』
慣れない名前で彼を呼ぶ。たったそれだけなのに、愛しい気持ちが溢れてく。
「ゴメン、止まんなか…」
『好き、すきです…///』
その首に腕を回し、ぎゅうっと抱き付く。彼は驚いたようにびくりとし、それから私の髪を優しく撫でてくれた。
「なになに、積極的だね?」
『黄金川君と、作並君に、聞きました。男性は、気持ちを素直に表現してくれるだけで嬉しいものだと』
あいつら…と、先輩は額を押さえた。たしかに私は消極的だと思う。口数だって決して多いわけでは無いし、それに加えて口下手だ。それでも、二口先輩にだけは。
『ちゃんと、伝えたいんです』
喜びも、怒りも、哀しみも、楽しさも。
私の喜怒哀楽の、全てを。
私の"好き"の、全てを。
「あのね、海宙」
『はい?』
「大好きな子にそんなこと言われたらね、男は理性がもたなくなります。分かる?」
『理性、無くても、いいです…///』
「いやいやいや…俺ガチで襲うよ!?」
『け、堅治さんなら、いぃ、です…っ///』
二口先輩は、まるで小鳥が木の実を啄(ついば)むような、可愛らしいキスをくれた。それから優しく、笑った。
「優しく、できないかもよ…?」
『大丈夫です。覚悟、してます』
「俺に抱かれて、後悔はしない?」
『そんなの。するわけ無い』
「そっか、じゃあ…」
海宙を、俺にちょーだい?
額に、頬に、唇に。
首筋、鎖骨、胸元に。
二口先輩は私にキスの雨を降らせた。