Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第20章 ★文学少女の恋愛論《二口 堅治》
パジャマ代わりのTシャツとハーフパンツを身に着け、部屋に戻る。
「うぉーい、海宙ーっ…て」
寝てる、のか。彼女は俺のベッドに背中を預け、寝息をたてていた。閉じられたまつげは呼吸と共にふるふると揺れ、小さく開いた口からは、吐息が漏れ、なんというか…
「キス、してぇ…」
衝動に駆られそうになるのを、ぐっと堪える。ダメだ、ここで無抵抗かつ無防備な海宙に手を出したら信用がた落ち。それどころか、別れ話が…
うげ、けっこうヤバいぞ、それは避けたい。
とりあえずこのままじゃカゼを拗(こじ)らす。そう思った俺は、彼女の膝裏と背中に手を差し込み抱えた。軽そうだと思っていた彼女は思った通りに軽かった。
『………んぅ…ん~』
「あ、起きた?」
『ん~…ふたくち、せんぱぃ…?』
寝起きで呂律が回らないのか、舌っ足らずな彼女。その目はとろん、としてるし、ぽや~っとした顔は、あどけない子供のよう。
「眠いだろ、ベッド運ぶからな」
『は、い…』
そっと横たえさせれば、俺にも寝転がるように促すので、ごろりと横になった。
「もう寝るか?」
てか寝よう。俺の理性が頑張ってるうちに。
『ん~、ちょっとお話しがしたいです』
寝よーぜー!マジで、俺が、ヤバいから!
「おう。で、なんの話し?」
平静を装いながら、内心はバックバク。広い襟元から覗く鎖骨はまぁエロいし、ちらりと見える腹も白いし。
『あの、二口先輩』
「ん?」
『わ、私が何をしたら、嬉しいでしょうか』
「んー、まずは敬語なくそ。それと、名前で呼んでくれたら嬉しい」
『分かりまし…わ、かった。えと…』
「ん、どったの?」
俺のシャツの胸元をきゅ、と握る海宙。それから少し震える声で、ぽつりと呟いた。
『け、んじ…///』
ぷつり、理性の、切れる音。
気が付けば、俺は彼女の唇に自分のそれを押し付けるようにキスしていた。