Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第20章 ★文学少女の恋愛論《二口 堅治》
そして8時も過ぎ、あまり遅くなると両親も心配するだろうと帰ろうとした時だった。ピロリンピロリンとテレビ画面からは緊急速報が流れたのだ。
「は、なんだよ?」
「あら、台風。ついに上陸したのね」
テレビでは天気予報士が台風7号が静岡県に上陸したと告げていた。
『雨降ってますかね…?』
「俺、外見てくるわ」
そう言って靴をつっかけ、外に出る。ビュオウと風が吹き抜け、大粒の雨が叩き付けるように降っている。慌てて家の中に戻る。数秒しかいなかったのに、濡れている。
「海宙、今日帰るの止めとけ」
『え…?』
「雨も風もヤバいわ。これじゃ帰れねーわ」
『そんな、どうしよう…』
不安の色を見せる海宙に、母さんは努めて明るい調子で言った。
「大丈夫、一晩くらい泊まっていきなさい」
『はい、お言葉に甘えるようですが、よろしくお願いします』
こうして、台風のおかげで(こう言っちゃ悪いか)、海宙がうちに泊まることになった。
母さんは電車が止まった父さんのために、迎えに行くとかで、2時間くらい帰ってこれないらしい。しかも飲み会。どこまで呑みに行ってんだよ、と思ったら、知り合いがどーので、福島のナンタラ町に行ってるらしい。
交代でシャワーを浴びることになり、海宙に先に入ってもらうことにした。制服なのはさすがに困るだろうと思い、着替えはクローゼットの奥から引っ張り出した俺のTシャツとハーフパンツ。下着は無いので、急いで洗濯機を回した。
コンコン、と控えめにノックされ、どうぞと返すと、部屋のドアが開けられる。そこには風呂上がりの海宙がいた。
急いであがってきたのか、頬はほんのり桜色で、髪もしっとり濡れていた。それに、ハーフパンツから覗く白い素肌が眩しい。理性が危うい気がしたので、直視は避けよう。
『先輩、お風呂ありがとうございました』
「ん。じゃ俺も浴びてくるわ。てきとーに部屋で待っててくれる?」
『はい』
戻ってきた海宙と入れ違いに、俺も風呂に向かった。彼女の入ったばかりの浴室は、なんだか甘いような、良い匂いがした。果たして俺は、大丈夫だろうか。
「手ぇ出さねえ自信ねえよ…」
頭をがしがしと洗いながら、一人悶々とする夜9時半だった。