Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第20章 ★文学少女の恋愛論《二口 堅治》
【二口 side】
ぽつぽつと会話をしながら帰り道を辿る。海宙はバレー部に顔を出す機会が増え、いつの間にかマネージャーのようなこともするようになっていた。それに一番喜んでいたのは、滑津と追分監督だった。
そうこうしているうちに、気が付けば、海宙と付き合い出してから2週間が過ぎていた。
話す内容は部活でのことや、クラスでのこと。海宙は本が好きだからか、最近読んだ本の話なんかもする。
『…その後、恋人の命か、世界かのどちらかを選ばなくてはいけなくなって…』
「うわ、マジで。で、どうしたよ?」
『そう。苦渋の決断を迫られた主人公は世界を救うことを選ぶの。それから、亡くなった恋人を想いながら自分も死を選ぶの』
「うわー、それは切ないわ」
『あのシーンは本当に泣けました』
海宙の話し方は、上手い。聞く方の興味をそそる表現をするし、なにより話している時の本人の顔が良い。生き生きしてるし、すごく楽しそうに話すのだ。
そうしているうちに、彼女の家に着いた。俺の家はその先にあるので、いつも彼女を送ってから帰る。
「じゃ、また明日な」
『あの、二口先輩』
「ん?」
それから、彼女は俯き、うっすらと耳を赤らめながらか細い声で言った。
『せ、先輩の、お家に行きたいです…っ///』
「俺は良いけど…家の人とか心配しない?」
『友達の家に遊びに行くと伝えてあるので、問題は無いかと』
「そっか、じゃおいでよ」
母さんに彼女ができたって言ったら紹介しろってうるさくてさ~、なんて言ってみるけど、内心は驚いていた。
海宙はあまり積極的では無い。未だに名字で呼ぶし、敬語も崩さない。そんな彼女からそんなことを言い出すとは。何があったにしろ、嬉しいことに変わりは無い。
「じゃーさ」
『はい?』
「手、繋いでこーぜ?」
『っは、い…///』
おずおずと差し出される左手を、右手で掴む。きゅ、と握られたその手は、華奢で、細くて、小さくて。
離したくないな、と思った。