Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第20章 ★文学少女の恋愛論《二口 堅治》
帰り道、食べそびれていた二口先輩に貰ったメロンパンを取り出し、ぱくりと口に含む。さく、ふわ、メロン、そして美味。
『食べ歩きは行儀悪いよね』
「あ、そこ座ろう。私もおやつ」
目当ての本屋さんの前にはこじんまりした公園があった。ベンチが3つに滑り台が1つの小さな公園。そのベンチに座り、休憩。
「二口先輩、優しいね」
『どの辺りが?』
「パンあげるなんて」
『そうかな?』
個人的には、満腹だったのとちょうど良いところに私が来たからだとしか思えない。でも貰った物は有り難く(ありがたく)頂戴しよう。
はむはむとメロンパンを食べ、本屋さんに入る。それから少し奥の方の棚、恋愛小説や、携帯小説などのコーナーを覗く。
「わぁ、いっぱいあるね!」
『本当、たくさんあるんだね…』
天上まで届く棚に、いっぱいの本。試しに1冊手に取ると、表紙では男の子と女の子が今にもキスしそうだった。見てはいけないものでも見たようで、慌てて戻す。
普段は文学小説や歴史小説ばかり読むから、こういうのはなんだか新鮮な感じがする。
『あ、これは…?』
「こっちも面白そうだよ?」
ネットで話題の歌を元にした本や、人気のライトノベル作家の本など幾つか選択し、お会計。私と紫乃ちゃんで2冊ずつ、計4冊の本を買った。
2人とも読むのは速い方なので、読んだ本から意見交換をすることになった。
その夜、家に帰り、お風呂と晩ご飯を済ませる。そしていつもより早い11時には両親におやすみなさいを言って、そそくさと自室に向かった。
鞄から取り出した真新しい本のページを、そっと開く。買ったばかりの本からはインクの匂いがする。
パラリ、とページを捲ればそこはもう、本の世界。あたかも自分がそこにいるかのように情景は目に浮かぶし、書かれた言葉からその場の雰囲気や感情まで伝わってくる。
一気に読み進め、ぱたりと本を閉じたのは、夜中の1時半。そこそこ分厚い本だったのに、2時間半で読みきってしまった。
『収穫もあったし、明日は紫乃ちゃんに報告できるかな…』
そんな淡い期待を抱きながら、布団に潜り、静かに眠りに落ちていった。