Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第20章 ★文学少女の恋愛論《二口 堅治》
次の日に知ったことだが、彼女は名前を蒼井海宙というそうだ。黄金川や作並と同じく1年A組らしい。
それから、海宙ちゃんと紫乃ちゃんは週に1,2回のペースでバレー部に顔を出すようになった。ただでさえ女子生徒の少ない工業高校、彼女たちの存在は、砂漠のオアシスのようなものになっていた。
『こんにちは、お邪魔します』
「お、きたきた。お前らー、休憩なー!」
すっかり馴染んだその声に振り向けば、トートバッグを持った2人の姿があった。マネージャーの滑津(なめつ)も集まり、束の間のブレイクタイムとする。
『今日はクッキー焼いてきました』
「普通のとチョコとオレンジとイチゴです」
ぱかっとタッパーの蓋を開けば、ふわりと甘い良い香り。そして群がる男子。始めこそその身長とテンションの高さに驚いていた2人だったが、今では部員たちと仲も良い。
「ごめんね、わざわざ作ってもらって」
『いいんです。私も紫乃ちゃんも趣味で作ってるだけですし、喜んで食べてもらえるなら嬉しいですから。ね、紫乃ちゃん』
「はい!黄金川君も先輩たちもたくさん食べてくれるんで、作りがいありますし!」
「滑津も食えよ、うめー!」
「少しは遠慮しなさい…」
モグモグしながら言えば、滑津からは呆れた言葉が返ってきた。くすくす笑う海宙ちゃん。それを見ていると、心臓らへんがぎゅっとなるようで。
そうしているうちに1ヶ月が過ぎ、青根と紫乃ちゃんはめでたく付き合うことに、そのころには、俺はすっかり海宙ちゃんに惚れていた。