Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第19章 ☆ドキドキデート《赤葦 京治》
【蒼井 side】
出た、出ました。このいかにもな作り。正面には、どどんと大きく"ホラー・ハウス"という看板。色も文字もおどろおどろしいのが嫌味だ。
『ねぇ、本当に行くの…?』
「約束、しましたよね?」
『ソウデスネ…』
赤葦君に見抜かれたのは迂闊(うかつ)だった。ホラーが大っ嫌いという事実、できるだけ隠したかった。なぜかというと、弱みにされそうだったから。
現にホラ、この状況ね。
右手は赤葦君に捕まってるし、トイレもさっき行ったばかりだし。打つ手無し。
「じゃ、行きましょうか」
『うー、怖いー怖いよー』
「いざとなったら俺がやっつけますから」
『頼りにしてるぞ、赤葦君(笑)』
ファイティングポーズをする赤葦君に、少しだけ不安が和らいだ。それも束の間、中に入った瞬間に恐怖が煽られる。
足音が響く造りなのか、コツ、コツと一歩ごとに鳴る。それに、不気味なBGM。
『ねぇ、何かいない?何もいない?』
「大丈夫です、まだ」
『まだって何!?』
曖昧な表現の赤葦君をすかさずつっこむ。まだ余裕があるから大丈夫。でも次の瞬間、そんな余裕は跡形も無く吹っ飛んだ。
「あそぼぉ…あそぼぉよぉ!!!」
『ぎゃ―――っ!?!?』
天井からデロンと降りてきたのは、顔面血だらけ、口がぱっくり裂けた少年。思いっきり赤葦君に抱き付いた。
『うー、もうムリぃ…』
「まだ始まったばっかですよ」
喉の奥でクク、と笑う赤葦君。くそぅ、このドSめ。
それからは散々だった。ぶら下がるコンニャクにびっくりしたり、スカートの裾を引かれて振り替えったらのっぺらぼうだったり。
極め付けは最後の最後。明かりが見えてきて、一安心。と思ったら、狼男が襲ってきた。しかも、群れで。
『きゃー、食べられる食べられるよっ!?』
「うわ、これ作りがこってますよ」
そんなのはどうでもいい!というつっこみは心の中で。声にする気力すら無いんだもの。心身共に憔悴状態でお化け屋敷を攻略した私たち(主に私)。
そして、お化け屋敷を出た瞬間、赤葦君は笑い出した。
「あっは、ははっ、海宙さっ…クク」
『赤葦君、笑わないでよ///』
「いや、あの反応は傑作…」
一頻り笑って彼は笑顔で言った。
「今度は貞子でも観ますか」
『見ませんっ!』