Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第19章 ☆ドキドキデート《赤葦 京治》
【蒼井 side】
赤葦君の印象はね…
一言で言うなら、ヒマそうな人、かな。
だって、初めて会った時からヒマそうだったんだもん。カゴを運ぶの手伝ってもらったし。第一、それは彼がスゴく暇人に見えたからだし。
まぁ、パシリに使ってる木兎を呼びに行くのがめんどくさかったっていうのもあるけど。
手伝ってもらって、彼の名前を聞いて、ポケットから飴玉を2つ出して、ころりと手のひらに転がす。
『赤葦君ね。はい、ボランティア代』
手渡したその瞬間、一瞬だけ
彼の雰囲気が、変わった気がした。
真一文字に結ばれていた唇が、
やわらかく、弧を描いて見えたの。
それからかな、赤葦君が気になるようになったの。赤葦君を、目で追うようになったの。
そうして数ヶ月が過ぎたある日の自主練の後。帰ろうとすると、赤葦君に呼び留められた。東京では珍しく、身も凍り付くくらいに寒い冬の日だった。
「木兎さんと付き合ってるんですか?」
開口一番に言った赤葦君。キョトンと目をぱちくり。なぜに木兎が?
『まさか。アレは友達、仲の良い同級生ってだけ。それ以下でも、以上でもないよ』
そう答えると、良かった、と聞こえた。
ん?良かった?なにが?
「海宙さん」
『はい?』
それがいつもの"蒼井さん"じゃないのに気付いた時には、彼の腕の中だった。少しの汗の匂いと、柔軟剤の優しい香り。それから、あったかい…
「初めてあった時から、ずっと好きです」
『えっ///』
「好きです。俺と付き合ってください」
『わ、私で良ければ…///』
腕の中から見上げれば、私が知らない彼がそこにいた。今までのどの時とも違う、優しい、やさしい顔。
きゅん、と、胸がときめいた。
「そういえば、俺、今日誕生日なんです」
『え、そうなの!?』
プレゼント、何もないや…そう思ったら、唇をつぅっと指でなぞられた。初めての感覚に、ぞくりとする。
「だから海宙さん、プレゼントください」
『んっ…///』
そして重なる唇。初めてのキスはなんだか甘酸っぱい感じがした。赤葦君の唇はやわくて、ちょっとかさついてて。それから、蕩けるようだった。
高校2年生の冬、人生で初めての彼氏は後輩君でした。