Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第19章 ☆ドキドキデート《赤葦 京治》
【赤葦 side】
え、海宙さんの印象?
ころころ表情の変わる人だな、と思った。
初めて会ったのは体験入部。練習が一段落し、涼もうと体育館の外に出た時だった。
『ちょっとぉ、そこの、無気力な人!』
「え、俺…?」
振り向けば、そこには一人の女子生徒がいた。今思えばひどい呼び方だ。"無気力な人"と呼ばれたのは、多分人生で初めて。
『キミさ、バレー部の新入部員でしょ。コレ、運ぶの手伝ってくれる?』
「あの、ちょ…」
俺の返答を待たずして、彼女は俺にカゴを押し付けた。中には何が入っているのか、ずっしりと重たい。
『こっちこっち』
「はい」
スタスタと歩く彼女の後ろ姿を追い、慣れない校舎を歩く。向かう先は、出てきたばかりの体育館だった。
『タオルとドリンク、追加でーす』
うぇーい、と挨拶を返したのはバレー部の先輩たち。カゴを下ろすとわらわらと群がってきた。なるほど、ドリンクなら重いわけだ。
運んできたカゴからタオルを出し、部員に配る。俺に重たい方を持たせたらしい。くるりと彼女は振り向き、俺に笑顔を向けた。
『ありがとね。名前は?』
「赤葦京治、です」
『赤葦君ね。はい、ボランティア代』
ころんと手に転がされたのは飴玉。イチゴの赤とソーダの青。いたずらっ子みたいな笑顔に、みんなにはナイショね!とパチッとウィンク付き。
貰ったばかりのイチゴを口に含んでふと思った。そういえば先輩の名前、知らないや。
「先輩の名前は…」
『ゴメン、言ってなかったね』
眉毛を八の字にする先輩。
『蒼井海宙です。赤葦君の1つ上かな。これからよろしくね?』
「うす…」
軽く会釈をすると、先輩はにこりと笑って部員の輪の中に入っていった。先輩たちと笑い合う彼女の姿に、なぜか口許が弛む。ころ、と口の中で飴を転がした。
それが、彼女との出会い。