Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第17章 Summer's Memory《チーム青城》
ザザ…と波の音、セミの鳴き声、カモメの鳴き声、それから賑わう声。そんな音に負けないように、京谷に言った。
『京谷』
「ん?」
『助けてくれて、ありがとう』
「おう」
素っ気なく返す京谷。それでも、握った手を力強く握り返してくれて。それだけで、なんだかとっても、嬉しくなった。
みんなの元に戻る私たちの視界に入ったのは、挙動不審な及川さんだった。
「海宙ちゃんッ!」
『及川さーん!』
大型犬みたいに突っ込んできた及川さんに、思いっきり抱きしめられる。その力強さが、どれだけ心配してくれていたかを物語っていた。
『わ、え、ちょ…』
「良かった…無事で、良かった…っ!」
『ありがと、及川さん』
一瞬の躊躇の後、その背中に手を回す。つぅと、私の頬を涙が伝った。
「あれ、泣いてる?」
『えへへ、なんか、安心しちゃって』
及川さんから離れ、お辞儀をする。
『ご心配をお掛けしまして…』
「ったく、ヒヤヒヤしたわ」
「無事で良かったよ」
『えへへ…』
花巻さんに頭を撫でられへらりと笑った。松川さんも頭をぽんぽんしてくれた。不意に後ろから引き寄せられる。すっぽりと誰かの腕に収まった。
「心配させやがって…ッ!」
『岩泉さん…///』
耳元でぼそりと聞こえたのは、岩泉さんの低い声。どうしよう、なんか、ドキドキする。くるりと向きを変えられたかと思うと、おでこに衝撃。でこ、ぴーん。
『っだ!』
「少しは用心しとけ、バーカ」
『うぅ、言葉もありません…』
ジンジンと痛むおでこをさすりながら、唸るように言った。今回のこと、私のせいだ。しっかりと反省せねば。
「さ、海宙ちゃんも無事だったことだしビーチバレーしよう!」
『やっぱりバレーしたいんですね…』
及川さんが言い、それから4対4でバレーをした。相変わらず阿吽のコンビネーションだったり、国見が何気に頑張ったり、京谷がスゴかったり。
いつの間にかギャラリーがいて、女子で一人奮闘する私は、なんだか恥ずかしかった。
バレーも海も満喫したら、もう陽が暮れかかっていた。夜が近付くと波が高くなるから
そろそろ帰ろう。
『なんだかんだ言って、楽しかったね』
「また来たいな」
後ろを振り返り、京谷と話す。夕陽に照らされた海がどこまでも広がっていた。