Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第17章 Summer's Memory《チーム青城》
今更になって急に恐ろしくなる。イヤだ、イヤだイヤだ。
男がゆっくりと近付く。他の2人は1人が入り口に、もう1人は男のすぐ後ろにいる。ダメだ、逃げられない。
ずりずりと後退りするも、トンと背中が壁にぶつかった。心にじわりと絶望が滲む。
下卑た笑いを浮かべ、男の顔が近付く。
イヤだ
みんな
『イヤだよ…』
お願い
誰か
助けて
ポロリと、涙が零れる。
『イヤだあぁぁぁあっ!』
「蒼井ッ!?」
ドガッと扉が外れ、ぐあっと呻き声がする。逆光で見えないけど、黒い影。
ついで、もう1人の取り巻きの体もぶっ飛んだ。ガシャンとハデな音をたててイスの山に突っ込む。
「誰だ…っぐ!?」
「失せろッ!」
男を殴り、影は吐き捨てるように言った。その影は恐怖に震える私の肩にそっと手を載せる。
「おい蒼井、無事か」
『きょ、たにぃ…』
涙がポロポロと零れた。首に手を回し、すがり付くように抱き付いた。京谷は驚いたようだったけど、ぎこちなく背中を撫でてくれた。
良かった、助けてくれた。救われたという安心感が胸に広がっていく。
「戻るぞ」
『ん…』
京谷に手を引かれ、小屋を出ようとすると後ろから声がした。
「て、めぇ…そいつを返せ」
「…死ね」
そうとだけ言い、京谷は男のお腹を力一杯蹴っ飛ばした。
「行くぞ」
こくりと頷いてみんなの元へと歩き出す。
私を助けてくれた手が、
背中を撫でてくれた手が、
繋いだ手が、
そして伝わる温度が、
とても嬉しかった。