Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第17章 Summer's Memory《チーム青城》
どくり、心臓が脈打つ。
「おい、金田一」
「はい?」
「蒼井はどうした」
「いえ、先輩はまだ戻ってないです」
金田一の言葉に、思わず耳を疑った。頭の中で反芻するその言葉、まだ戻ってない。真夏のクソ暑い海だというのに、冷や汗が背中を伝う。良く分からないけど、胸騒ぎがする。
「悪い、金田一。ちょっと行ってくる」
「え、あ、先輩!?」
「どした金田一?」
「や、先輩が…」
全力で走り、さっき別れたトイレに向かう。走りにくい砂浜を恨む。汗だくになって辿り着いたそこには、誰の姿も無かった。
「クソ…」
なんで俺がこんな。蒼井のやつ、心配掛けさせやがって…ッ!焦る俺の耳に、思いがけない言葉が飛び込む。
「ねぇ、さっきの子大丈夫かなぁ?」
振り向くと、そこにはカップル。駆け寄って女の肩を掴み、有無を言わさぬ勢いで訊ねた。
「さっきの子って、どんなだった」
「髪、結んでて、き、黄色いパーカーみたいなのに、緑っぽいショートパンツで…」
「誰とどこに行った」
「あ、あっち…3人くらいの男と…」
女の指するのは人気の無い古い小屋の方。そして特徴からするに、蒼井で間違いない。最悪だ。
「クソッ!」
盛大に悪態を吐き、走り出した。なんで待っててやんなかったんだよ。今更後悔しても、遅い。だから頼む、後生だから無事でいてくれ。