Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第17章 Summer's Memory《チーム青城》
とんとんと肩を叩いて声を掛ける。
「海宙ちゃん、朝だよ」
『んぅ…やぁ、まだ寝るのぉ…』
するりと京谷の手が離れる。海宙ちゃんがもそもそと動き、顔を枕に埋める。さらり、と絹のような栗色の髪が横に流れる。
「ほーら、朝ですよー。及川サンですよー」
『うるさぃ、寝るぅ…』
「起きないとキスするよー」
若干本気で言うけど、海宙ちゃんは2度寝しようと俺を無視した。むっかー!及川サン怒ったもんね!
ころりと仰向けに転がして、前髪をよける。そしておでこに唇を付けた。
ちゅ、と。控えめな音がした。
ぱちりと開かれる茶色の瞳。
『へ…?』
「あ、起きた。おはよ、海宙ちゃん」
『…あ。え、っにゃああぁあぁぁあっ!?』
「のわっ!?」
にゃあー!という叫び声に、鼓膜が破れるかと思った。跳ね起きた海宙ちゃんの髪は、寝起きだというのにさらさらだった。
『おっ、おい、及川さっ!?///』
「いやー、朝から良いもん見たわ」
くっくっと喉の奥で笑うと、海宙ちゃんはおでこを押さえて顔を真っ赤にした。
『なんで、そういうことを…っ///』
「ほんっとに、かわいいね」
「及川、朝からイチャつくなよ」
『花巻さんっ、違いますっ!』
「えー、俺見たもん」
『もん、じゃないです!』
「照れなくても良いのに」
もおぉぉぉお!と枕をぼすぼす叩く。海宙ちゃん。さっきのと今のとで、全員が起きた。京谷と金田一は寝惚けてるけど。
「…るせぇ、蒼井」
『京谷。今は、触れないでください…』
「フン。そもそも2人が手を繋いでたのが悪いんだからね」
『及川さん、許してください…』
今日の海宙ちゃんは、素直だ。キスしてくれたら良いよー?と言えば、ぺちんと頭を叩かれた。
『もう、及川さん調子に乗らないで。あ、着替えたら朝ご飯だから1階の大広間だって』
そういうと、海宙ちゃんは着替えと洗顔道具を持って立ち上がった。
「どこ行くの?」
『洗面所。着替えを見せるわけにはいかないんで。あ、覗いたら海連れてかないから』
淡い期待も打ち砕く一言。でも、朝からちょっと得したな、と 海宙ちゃんの後ろ姿を見詰め、思うのだった。