Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第17章 Summer's Memory《チーム青城》
及川さんから引き剥がされ、後ろにぽてっと尻餅をつく。後ろから伸びた手にすぐさま抱きしめられる。
『きょう、たに…?』
鋭い目付きで及川さんを睨むのは、京谷。
「ふぅん。狂犬ちゃんも?」
「違う。蒼井、嫌がってたから」
「俺の腕の中で大人しくしてたけど?」
「ヤダって言ってたじゃないすか」
「本当にイヤならもっと嫌がる。じゃない?」
「及川さんが先輩だから気を遣ったんです」
『あの、2人とも、喧嘩はダメ。ね?』
とりあえず止める。それでも、2人の間にはバチバチと火花が散っているようで。一触即発の緊張感が漂う中、のんきな声が聞こえた。
「あぁ、眠い。せんぱーい、寝よー」
『国見…あ、うん。そうだね』
その一言で休戦。それぞれも布団に戻り、寝る準備をする。
それより国見、あんた勇者だね。ちょいちょいと手招きする国見。京谷の腕をほどいて、自分の布団に戻った。
うつ伏せになり、枕に顔を埋める。なんだかスゴい疲労感。今日は熟睡しそう。ごろんと寝返りをして、仰向けになる。
「おーい、電気消すぞ」
岩泉さんが電気を消す。
「おやすみー」
『おやすみなさい…あ、明日は海だからね。ちゃんと早起きしてね』
うぃーすと返事が聞こえる。しばしの静寂。するとすぐに左から寝息が聞こえてきた。国見落ちるの早…
目を閉じていると、睡魔の気配。寝そうになったその時、右手に違和感を感じた。顔を向けると、京谷が私の手を掴んでいる。
『何?』
微かに声を出すと、口パクで返された。
「ゴメン」
珍しく素直な京谷に、フッと口が弛んだ。京谷は、なんだかんだ言って良いヤツなのだ。
『おやすみ』
「おやすみ…」
その返事に、心がほわっと温かくなる。今日一日、色々あったけど、楽しかったなぁ。ほわっとした温かさを胸に、私は眠りへと落ちていったのでした…
…繋いだ手の存在を、すっかり忘れて。