Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第17章 Summer's Memory《チーム青城》
「あれ、おかしいなぁ…さすがに男も気になり出してさ。少し早歩きになるんだよ。そしたらどうだ、後ろから走る音が聞こえる。
あははっ、あははははは…あははは…
そうしている間にも、笑い声は止まらない。なんだか急に怖くなって、全力で走り出した。振り向いてはいけない、そう思いながらも振り向いてしまった。そこには…」
部屋がシンとなる。次の瞬間、花巻さんは両目をくわっと見開いた。
「そこには…血走った目を見開いて、手足が変な方向に曲がった少年がいたんだッ!」
『きゃあっ!?』
「ぎゃー!」
迫力に気圧されて思わず悲鳴が漏れる。ぎゃー!は及川さんのだけど。
『分かった。もう良いです、大丈夫で…』
「はーい、話はまだ終わらないからねー。
男は全力で走った。走って走って、ようやくエレベーターに乗り込んだんだ。早く、早く。何階でも良いから逃げたい。ボタンを連打しても、いっこうに動き出さない。
あはっ、あは、あはははははっ!
狂った少年は走ってくる。誰か、頼むから、早く。その時、ポーンと音がしてドアが閉まり始めた。少年は刻一刻と迫ってくる。
そして最後の1㎝が閉まったとき、男は安堵のあまり後ろに寄り掛かった。良かった、逃げ切れたんだ、と。
…次の瞬間、バキッと音がして、ドアが抉じ開けられた。そこから覗くのは少年の目。
あははは、見ぃつぅけた…捕まえたぁっ!
ガシッと男に飛び掛かる少年。男の意識はそこで途切れたんだと」
怖すぎるわ…花巻さん話し方上手すぎでしょ。ホッと安心、かと思ったら、物語には続きがあった。
「でな、男が目を覚ますと、自分の病室だったんだとよ。それでも、あの笑い声が耳に貼り付いているようで気味が悪い。変な夢を見たなぁ、と思いながら布団を捲ると…」
ガシィッと及川さんに飛び付く。
「あははははっ、あはははははははっ!」
「ギイィヤアァーッ!?!?」
『キャアァァァアッ!?』
怖くなって目を固く瞑り、隣の何かに抱き付いた。そろりと目を開くと、抱き付いた何かは国見だったと今更気付く。国見はニヤリと笑ってるけど、他のみんなの視線が痛い。
…教訓。怖い話は、イロイロ危険だ。