Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第17章 Summer's Memory《チーム青城》
【花巻 side】
電車を降りて、徒歩で数分。目的の旅館は海の見える小高い場所に建っていた。玄関では着物姿の女性と青年が立っていて、俺らを出迎えてくれた。
「あら、海宙ちゃん!」
『おばさん、陸人、久し振りだね』
「でっかくなりやがって、コンニャロ!」
わっしわっしと蒼井の頭を撫でる青年に、ピシリと俺らの表情に亀裂が走る。それを知ってか知らずか、蒼井は微笑みながら言った。
『こっちが私のお母さんの妹、ミドリさん。の息子がコレ、陸人。27歳独身』
「あっテメ、何言ってんだ!」
『本当のことだもん!』
2人の間でおいかけっこが始まる。その様子にミドリさんはおおらかに笑った。
「さ、宮城からの長旅でさぞお疲れでしょう。ゆっくり休んでってね」
俺らが通されたのは、見事なオーシャンビューの広がる部屋。団体客用らしく、とても広々としていた。
「うぉー、畳だー!」
「もう疲れた…」
「国見、あっぢぃ!」
ごろりと畳になる金田一。その上に折り重なるようにして倒れた国見。そりゃ暑いわ。
「とりあえず、荷物広げるか」
「だな」
松川と荷物を出していると、部屋の外から話し声が聞こえた。
「ごめんねぇ。夏場でこの陽気でしょ?お客さんいっぱいで、空き部屋無いの」
『え、じゃ私もここ?』
「お友だちって言ってたから女の子だと思って。やっぱり男の子だから気になるら?」
『ん~…ま、大丈夫でしょ!』
「良かった!晩ご飯はいつにするら?」
『じゃあ、6時半で』
「はいよ。じゃ皆さん、ごゆっくり」
ミドリさんはペコリとお辞儀をして、パタパタと駆けていった。そして、さも当然のように蒼井が入る。及川が食い付かないわけがない。
「あれ、海宙ちゃん?」
『あ、私も部屋ここだから。不本意だけど』
「やったー、岩ちゃーん!」
「うぜェ」
ガーンと効果音が付きそうな顔になる及川。けらけらと蒼井が笑った。それから、1つ留意点を言った。
『私に手、出したら、ご飯抜きだからね?』
天使のような笑みで告げられた現実に、俺らは誰一人として反論できないのであった。